2011年7月30日

after 衣食住

3・11以来、業界の集まりなどでお偉いさんとかが挨拶などをすると、決まって言うセリフがあります。

震災直後こそまずは目の前の生活にしか目が向かないけれど、衣食住が落ち着くと、その後で人は活字を求めるようになる。

確かに、一つの真実ではあると思います。前年割れがずーっと続いているこの出版業界で、東北の書店だけは3・11以来、前年比プラスの結果をたたき出しているという現実の数字からもこのセリフは裏付けられます。

でも、本当に、人々は活字を求めているのか、というと首をかしげたくなることもあります。電気などが十分に通っていない、そもそもテレビが津波で流されてしまった、という状況なので、電気も必要としない本でも読むか、という面もあるのではないでしょうか? つまり、テレビかラジオがあって、電気も使えるのであれば、本に流れた人の相当数がテレビやラジオに行っていたのではないか、と思うのです。

もちろん、東京の計画停電の時もそうでしたが、電気が使えなくても本は読める、という書籍のアドバンテージは見直された感はあります。ウンベルト・エーコの『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』じゃないですが、数百年たっても読める本という発明品は、その点ではすばらしいと思います。

東北が元気だ、東北の書店の売り上げは上がっている、なんて言われても、業界全体では昨年比で決してプラスにはなっているわけではなく、出版業界の低迷はいったいいつまで続くのでしょうか?

「東北は元気」的な話を聞くたびに、そう思ってしまいます。そもそも東北の人、被災地の人に元気をもらうって、あなたはどれだけ疲れているのよ、と突っ込みたくなるんですけど・・・・・・(爆)

読んだ感想を書く