2011年6月13日

朝日新聞の記事より

昨日の朝日新聞読書欄で紹介された『字幕の名工 秘田余四郎とフランス映画』ですが、楊逸さんの文章を読んで、「ああ、この本は確かに映画字幕についての本で、芸術書(映画)コーナーに置かれていることが多いけど、翻訳文学という見地からも読めるんだなあ」と思いました。

映画字幕と翻訳とは何が違うとか、そういった話は、実のところあたしにはよくわかりません。ただ、どちらも外国語を自分の国の言葉に置き換える作業であり、なおかつその置き換えた言葉によって読み手(映画鑑賞者)の心を揺さぶるような感動(だけじゃないか?)を引き起こさないといけない、という面では共通するところも多いのだと、改めて思いました。

となると、なまじ芸術に造詣が深い人よりも、楊逸さんのように二つの言語の間を行き来している方に評してもらう方が、この本にとってはありがたいのかも知れない、そんな気がしました。もちろん戸田奈津子さんの言葉も、同業者ならではのもので的確ではありますが、翻訳家と呼ばれる方々に是非とも書評を書いてもらいたいと思った次第です。

そんな朝日新聞のこのところの不定期連載記事「出版サバイバル」が今日の夕刊から始まりました。今回のテーマは「中小の挑戦」ということで、つまりは中小出版社が中小なりに頑張っているというレポートです。

そもそも出版界はいくつかの少数の大出版社を除けば、そのほとんどは中小、むしろ零細と言っていいようなところばかり。それがよいのかどうかはわかりませんが、記事を読んでみて「なんか、いまさらだよなあ」という気がしました。

なんというのでしょう、大企業に負けずに、中小企業だって頑張っているんだぞ、という遠吠えが、かつてのNHKの「プロジェクトX」みたいで、既視感を覚えます。それに、中小企業が大多数を占める出版界で、こういった中小・零細出版社発のヒット作は、これまでにもいくらだって例があったと思います。昔から、こういう紹介記事ってありましたよね。

それなのに、そういった出版社がその後どうなったか。結局、巨大出版社と零細出版社という業界の枠組みは相変わらずであり、紹介されたようなヒット書籍はあっても、大きな流れの上ではジリ貧のこの業界。

そういった小さなヒットが業界の発展にいかなる貢献をしえたのでしょうか?

あたしは別に、そういうヒット作を生んだ出版社をどうのこうの言いたいのではありません。せっかく、そういうところにスポットを当てた連載なのであれば、それでも上向かない出版界をどうしたらよいのか、そういったところにまで踏み込んだ記事を期待したいのです。



ちなみに、あの未来ちゃん。正直言って、決してかわいくはないところが魅力ですね。

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