2011年6月 5日

偏差値に正比例?

あたしの勤務先は出版社です。ですから、その営業とは書店を回ることになりますが、書店回りと同じように時には大学内の書店にも顔を出します。たぶん、このダイアリーをお読みの方の中にも、あたしのきんっむさきの語学テキストを中国語やフランス語などの授業の教科書として使ったことがある、という人がいらっしゃるのではないでしょうか。

それはさておき、大学内の書店というのは、一番多いのは大学生協です。全国の大学の仲の書店のどのくらいの割合が生協なのかは知りませんが、たぶんシェア一位は生協だと思われます。その他に紀伊國屋書店、丸善、三省堂など街の書店でもおなじみの顔ぶれが大学内の書店として営業しているところもあります。あとは、その大学の近所にある、本当に小さな街の書店が大学内に支店を出していることもあったりします。大雑把に言ってしまえば以上の通りです。

いや、もしかすると、書店なんて大学内にないよ、という大学が実は一番多かったりして・・・・・・(汗)。でも、そんな言葉が真に迫るほど、今の大学生って本を買ってくれません。いや、買っているのかも知れませんが、大学内の書店では買わないようです。一部の大学内書店を除くと、小さいお店がほとんどですから、欲しい本は置いてない、置いてあるのは授業の教科書だけ、というお店が多いのかも知れません。

さて、上に書いた紀伊國屋など、本来本屋であるところが大学内で営業している場合、そこのスタッフはパートの方も多いですが、基本的には出版業界の人と言えます。本の流通についても、ある程度の知識がありますし、社員の人は数年で異動しても、パートの人はそのお店に長く勤めていて、先生や学生のの傾向や売れ筋を熟知している人も多く、こちらも頼りにしています。

ところが、大学生協の場合、必ずしも書籍部門だけとは限りません。食堂もあれば文具もありますし、食品なども扱っています。(最近は、書籍は本屋、物販はコンビニ、食堂もどこぞのチェーンを学内に入れている大学もありますね。)

大学の生協を回っていますと、前回来たときには本を売っていた棚が、今回行ってみたら菓子パン売り場に変わっていた、なんて経験をすることもあります。確かに本よりもお菓子や文具の方が確実に売れますから、利益追求としては正しいやり方だと思います。

売り場レイアウトがそのように変わるのは仕方ないとして、大学生協の場合、担当の方が必ずしも書籍専門でない場合も時にあります。これも生協という事業形態を考えるとやむを得ないのですが、先月までは文具を売っていましたとか、食堂担当でした、というような方が新たに書籍の担当になられると、本のことをこちらがレクチャーする反面、逆に出版業界のおかしなところを指摘されたりして、それはそれで新鮮です。

と、まあ、そんな大学内書店回りの実態はともかく、大学周りですから、どうしてもその学校の偏差値と言いますかレベルを意識してしまいます。あたしが受験した頃とは偏差値マップもかなり変わっているでしょうし、その頃にはなかった大学や学部・学科も増えているでしょう。ですから、あたしが頭の中に持っている偏差値でその大学を見てはいけないのですが、やはりどうしてもそういった先入観は抱いてしまうものです。

あたしが受験生だった頃は、現在のように全国の大学を受けるなんて、東大や京大を除けばほとんど聞くことはなく、あたしのように東京の高校生は東京の大学を受けるだけでした。ですから、東京の大学については、どうしても受験の頃の偏差値レベルと意識してしまいます。この大学はベベル高いんだよな、とか、ここはそんなに頭のよくない大学だったなあ、とか、言葉は悪いですけど、どうしてもそういう色眼鏡で見てしまいます。

よくないことだとはわかっているのですが・・・・・・

ただ、仕事ですから、あたしの場合、大阪とか北海道、東北の大学を何度か回りましたけど、そういう自分の受験と関連しない地区の大学回りですと、そういう先入観を持たずに回れるので、見えないところで仕事にはプラスに働いていたのではないかと思います。

で、そういった、決して多くはないあたしの大学回りの経験からしますと、偏差値の高い大学の学内書店が必ずしも品揃えが豊富で規模も大きいとは言えない、ということです。もちろん総合大学と単科大学とでは揃えないとならない本の種類が異なるので、総合大学の方がおしなべて品揃えが豊富になりがちですが、偏差値とは必ずしも連動していません。

結局はお店の人のやる気が品揃えに影響するのだと、これまた街の本屋さんと同じことが言えます。もちろん、大学教員と学生という極めて特殊な客層ですので、街の本屋とは売れ筋も異なったりしますが、でも、基本はお店の人のやる気です、意欲です。

そして、その意欲が伝わるからでしょうか。そういうお店は先生がよく本を買いに来ます。不景気のせいもあるのでしょう。学生はなかなか本にお金を使いたがりません。となれば、大学内書店にとって大切なお客さんはその学校の先生になります。先生とどうやって取り込むか。それに成功している書店は、訪問しても明るくて元気があり、こちらも訪問が楽しくなります。

そして、これも回っているうちに感じるようになったのですが、先生がよく学内書店を利用している大学では、学生も学内書店をよく利用するようになると言うことです。たぶん、授業でそんな話題が出たり、あるいは先生のちょっとした言動が学生に影響しているのでしょう。先生がよく訪れる書店は訪問していても、ひきりなしに先生や学生が本を買いに来ています。もちろん先生がよく来るので、お店の担当の方からも先生の名前がポンポン飛びだします。それだけお店と先生や学生とのコミュニケーションがとれているという証拠ではないでしょうか?

そして面白いことに、こういう傾向はその大学の偏差値とはあまり関係がないみたいなのです。なまじその大学の偏差値レベルを知っていて色眼鏡をもって見ていたら、お店の人ともこういった面白い情報交換ができなくなります。それだけは何年たっても厳に戒めないとなりませんね。

あっ、ということは、街の書店だって、見かけの売り上げとかお店の広さではなく、やはりお店の人意欲を見ないとダメなわけですから、やはり同じことですね。

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