2011年6月 1日

一見雑然とした書架の愉しみ

雨が降らなくてよかったと思いつつの書店回り。

紀伊國屋書店新宿本店5Fで「じんぶんや」の準備をしているところに遭遇。うろ覚えでスミマセン、確か今回のテーマは「小説と思考の繋留」だったような。つまりどんなフェアなのか、このタイトルだけでわかりますでしょうか? うーん、考えさせる本? えーと、哲学的な小説のこと? 棚に並んでいる本を貫くテーマ、地下茎のように脈々とその裏に流れる一本の熱いもの、それは是非、現場で目睹してください。

あたし個人としては、文庫も新書も単行本もごっちゃに並んでいる書棚になんか底知れぬ懐かしさと面白さ、ワクワクする気分を味わいました。昨今大型書店では文庫は文庫コーナーに、新書は新書コーナーに、それこそ出版社ごと、レーベルごとに番号順に整然と並んでいます。確かに棚管理としてはそれが効率的でもあり、多くの読者にとってはそれで十分なのでしょうけど、時に味気なく感じるのも人情です。

今回久々に、東京のど真ん中、転化の紀伊國屋書店新宿本店でそんな棚を目にし、ああ、だから本屋って楽しいなあという気が呼び覚まされました。

そして、その足で中央線に乗り西へ。向かうは立川のグランデュオ。立川中華街などが撤退して、新たにリニューアルした3フロア。その中に、オリオン書房のコンセプトショップ、オリオンパピルスがオープンです。

こういう言い方をしてしまっては身も蓋もありませんが、この数年はやりの、こだわりの本屋、雑貨や小物と融合した楽しめる書店、といった形態のお店の一つです。入ると本屋と言うよりは、ファンシーショップ的な雰囲気。ただし、お店の方によると、必ずしも女性客ばかりではなく男性のお客様も多いとのこと。うん、確かに棚をよく見ると、オンナの子しているばかりではなく、あらまあ、こんなところにとがったものが置かれてますわね、という部分もチラホラ。

なによりも、これが最大のコンセプトなのかも知れないですが、書棚がみんな違うんです。ふつう、本屋さんと言えば、ジュンク堂書店などが典型的ですが、決まった規格の本棚がずらっと並んでいて、そこに本が整然と並べられている、というイメージでしょう。本棚にまで凝っているのは、いわゆる上に書いたはやりの本屋でしょうけど、ここまでバラエティ豊かな書棚を並べまくった書店は珍しいのではないかと思います。

並んでいる本もそうですが、実はこの書棚を売るのがメインなのではないかという気さえしてしまいます。つまりは、この本棚にはこんな本をこんな風に並べて、さあ、いかがですか、という提案をしているのではないか、そんなコーナーというかスペースがあちこちに見られます。これはこれで、東京郊外なりの松丸本舗と言えるのかも知れません。

で、ここもやはり書棚には単行本も文庫も新書も、あまり形態に拘らず、むしろコンセプトやテーマに沿って並べているわけでして、そんなところがやはり本屋の醍醐味を感じます。お金持ちがやってきて、ある書棚においてある本の数々をしげしげ眺め、その本を気に入り、それを収蔵する書棚も気に入り、書棚ごとまるまるお買い上げ、そんなことは夢物語ですが、それくらいを目指す展開を期待したいところです。オリオン書房は既に立川にそれぞれの客層に遭わせて複数の店舗を持っているのですから、ここでそういうことをやってもよいのでは、そんな風に無責任に思ってしまいました(汗)。
 

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