2011年5月19日

ビジネスモデル

朝日新聞がスマートフォン向けに朝日新聞デジタルを創刊するというニュース。当然ながら朝日新聞は今朝の第一面だけでなく、紙面の中程でも数ページにわたって記事なのか広告なのかわからないものを載せていました。

朝日新聞がこういう取り組みをすること自体を云々するつもりはありませんし、現時点では興味もありません。いや、興味はありますが、あたしはiPadもiPhoneも持ってませんし買うつもりもありません。あたしの使っているスマートフォンはWindowsMobileという、世間から見捨てられたOSで、Andoroidではないので、やはり蚊帳の外です。購読してみたくても購読できません(涙)。

ただ、自分がiPadなりAndoridケータイを持っていれば購読するか、と聞かれたら、やはり二つ返事で「はい、購読します」とは言えないです。やはりちょっと考えてしまいますね。お金を払うのがイヤだというのではなく、単純にとりあえずは自宅で「紙の」朝日新聞を購読しているからそれでいいや、という気分です。記事も毎日勝手に配信されるのか、それともこちらからダウンロードしに行かないといけないのか、記事だけではよくわからなかったです。(あたしの理解力不足ですか?)

記事を自分のスマートフォンにストックしておけるようですが、一ヶ月かそこらで消えてしまう、といったことも書いてありましたから、それではあまり役に立たない気もします。せめて自分のスマホにダウンロードした記事は、永久にストックしておけないと、と思うのですけど。

ただ、そんなことよりも、やはりネット上の情報にもそれ相応の対価は支払われるべきと思うので、この朝日新聞の取り組みがビジネスモデルとして成り立つのかどうか、そこが最大の関心事なのです。

で、そんな風なことを考えていたときに、たまたま勤務先であることが起きました。起きましたって言うほどのことではないのですが、ネット上の情報や著作物に対する意識を改めて考えるきっかけとなりました。それは語学書の別売り音源のことです。

昨今は、語学書にはもうはじめからCDが付いた状態で売られているものがほとんどですが、中にはCDやカセットが別売りという商品もありますし、十数年ほど前まではカセットは別売りというのが主流でした。そんな別売りのカセットの注文が入ったのです。

今どきカセットか、という議論はおいといて、こういった音源を、いまなら勤務先のウェブサイトからダウンロードしてもらうことも技術的には簡単なことです。そういう語学書も既に他社ではあるようです。ただ、その場合、お金はどうするのでしょうか、ということです。

別売りのカセットやCDであれば読者(お客さん)も代金を払うことに納得していますし、タダで寄越せといった苦情を聞くことはありません。もちろん、高いといったクレーム、不満はあるでしょうけど、別売りの音源が有料ということにはコンセンサスがあると思われます。

ところが、これがウェブからのダウンロードとなると話は変わってきます。ネットからのダウンロードならタダでしょ、と思う読者が多いのではないでしょうか? と言うよりも、タダでダウンロードさせてよ、とか、えっ無料じゃないの、という不満を持つ人が多いのではないでしょうか?

どうしてそう思うのでしょうか? ネットだから、というのは答えになっていませんので、もう少し考えてみますと、ネットからのダウンロードなら輸送コストもかからない、パッケージ代もかからない、いつ来るかわからない注文のために在庫を抱える必要がない、といった出版社にはいいことずくめで、かなりの費用削減ができるでしょう、それに一回アップしておけば、それで済むのだから、あとは丸儲け、タダにしたって本を売ったお金で元が取れるんじゃないの、という理屈ではないでしょうか?

確かに、実際にかかる経費から言えば、そういう面はありますが、実はウェブサーバーの管理といった費用はかかりますので、まるまるお金がかからなくなるわけではありません。それにそもそも録音するスタジオ代といったものが一番最初にかかっているわけです。また別売り音源の代金って、パッケージ代とかそういったものだけではなく、そもそもは著者がいて、吹き込み者がいて、そういった人たちの努力によって作り出された、歴とした著作物なのであり、それを利用する対価であるという面が忘れられているような気がするのです。

そういう著作者、制作者に対する対価、報酬なんだという考えに立てば、カセットだろうとCDだろうと、ましてやウェブ上の電子状態だろうと、それがなくなることはないですし、増減することもないはずです。

あたしの勤務先も、音源は全部ウェブからのダウンロードにしようか、という議論が時に上がりますが、課金の問題がネックになります。いっそのこともうすべて無料にするか、という意見ももちろん出ます。それが宣伝となり、本の売り上げを押し上げるのであれば、無料にする意味が出てきます。でも、やはり、そんなことでいいのかな、という気もします。じゃあ、CD付の語学書からCDを外したら劇的に安くなるの、CDの部分はいくらなの、と聞かれると、またこれはこれで答えに窮するのですけど。

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