春は語学書の売れる季節
この春は、新刊の語学書がなかなかの好成績で、やはり語学書は手堅いなあと改めて実感している書店営業です。
はい、あたしの勤務先の場合、しばしば書評にも取り上げていただくような海外小説や近現代史の分厚い本がなにかと目を引きがちですが、大きな柱どころか土台を作っているのは語学書の方であります。
ただ語学書と言っても英語ではありません。もちろん、この数年ブームとなっている日本語でもありません。それ以外の言語です。「それ以外」と言いましたが、ほぼそれで間違いはありません。主としているのはフランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、ロシア語、中国語、朝鮮語など大学の第二外国語の授業にあるようなものですが、その他にもかなりマイナーな言語のもの出しています。
や、世界には言語の種類は数千あると言いますから、出しているのはそのほんのささやかな一部ではありますが、語学学習者の方々からはそれなりの評価をいただいていると言っても自信過剰な物言いには当たらないと思います。
でも、皆さんもお近くの本屋さんへ行ってみてください。そして、その外国語のコーナーを見てください。えっ、外国語のコーナーなんてない、そういう本屋さんもありますよね。と言いますか、たぶん、日本にある本屋さんの大多数はそうだと思います。
仮に半分の本屋さんには外国語コーナーなんて無いと仮定しましょう。あながち、乱暴な過程でもないところが、あたしの勤務先的には哀しい現実ですが、では、残りの半数の書店には外国語コーナーがあるとして、英語以外の語学まで置いている本屋さんはどのくらいでしょうか? これも、たぶん数えたら半分くらいになってしまうのではないでしょうか?
そうなんです。英語以外の、いわゆる諸外国語を揃えている書店って、案外少ないものです。その証拠に、あたしの勤務先にはしばしば、しょっちゅう「フランス語の本はどこへ行けば買えますか?」という問い合わせの電話がかかってきます。比較的都会にお住まいのお客様の場合、「某某書店さんになら弊社の商品はある程度置いていただいております」といった返事もできるのですが、そういう歳が近所にない場合は、もうネット書店をお使いいただくしかない状況です。
本屋さんの立場になれば、ちょこちょこっと英語だけ少し置いてあれば十分。このあたりじゃ、それ以外の外国語の本を買いに来るお客なんていないよ、ということなのでしょう。そりゃいないことはないと思いますが、商売になるほどの人数が住んでいるのかと問われれば、こちらも口ごもってしまいます。
と、ここまで世の本屋さんの4分の3には、英語以外の外国語の本は置いていない、と述べてきたわけですが、では残りの4分の1の本屋さんはどうかと言いますと、これもかなり乱暴な水量ですが、せいぜいのところ、仏独伊西中韓の入門書シリーズみたいなものを一揃い置いている、辞書はデイリーコンサイスかプログレッシブのようなポケット版が並んでいる、そういうところが大多数です。
たぶん、諸外国語もそこそこ揃えていますと言えるのは、全書店の8分の1か10分の1もあるかないか、だと思います(←うーん、かなり乱暴な数字)。でも、それらの書店も、このところの中国語・韓国語ブームのあおりで、あっちの出版社もこっちの出版社も中国語や韓国語の初級の語学書市場に参入してきて語学書コーナーの棚を席巻し、ひと頃に比べるとフランス語やドイツ語の棚が減っています。中国語や韓国語がブームになっても、それで外国語のコーナーの面積が広がるわけではなく、フランス語やドイツ語など既存の語学の面積が減らされるだけ、諸外国語全体の棚の面積は増えないのです。
いや、減らなければよい方で、本屋によっては「もううちは、英語以外は捨てました」と言わんばかりに英語以外の諸外国語の棚を縮小してしまったところもあります。フランス語が十数冊、ドイツ語が十数冊、イタリア語とスペイン語はもっと少なくて、中国語と韓国語はやや多め、あとはなぜかタイ語とベトナム語とアラビア語の本が1冊ずつ並んでいる諸外国語コーナー、なんていう本屋は全国にたくさんあります。
ところで、語学書は実用書です。先生から薦められて、お目当ての一冊を買う場合はよいですが、自分で参考書を選ぶ場合、いろいろ手に取って見比べて、そして買うものだと思います。それが実用書の正しい選び方のはずです。
でも、こういう風に品揃えが少ない書店では選びようがありません。比べたくても比べるだけの商品が揃っていないのですから。もちろん、ものすごい目利きの担当者が、「フランス語だったらこれだけ揃えておけば十分。これ以外の本は買っても無駄だ、役に立たん」と言い切れるくらい、選び抜いた品揃えなら、それはそれでありでしょう。でも、そうでなければ、結局買う方も少ない選択肢の中から仕方なくどれか一冊を選ぶか、諦めて買わないか、都会の大きな本屋さんに行く機会があったら買うかのいずれかになるでしょう。ますます売れなくなりそうです。
で、結局、諸外国語の本は、都会の大型の本屋さん、英語以外の語学も品揃えが豊富なお店にお客も集中するようになり、そういうお店ではどんどん売り上げを伸ばしているのに、それ以外のお店では諸外国語はますます売れなくなる、という二極化が進んでいくのです。
あたしは、中途半端に諸外国語を置くくらいなら、いさぎよく英語以外は置くのをやめなさい、と言いたいです。問題なのは、売り上げを伸ばしている大型店ではなく、それよりももう少し小さいところです。小さいとは言っても、一昔前の本屋の規模からすれば十分大きいのですが、昨今できている1000坪もあるような書店に比べれば小さいという意味です。
そういう書店は、英語以外の諸外国語もそこそこ並んでいます。決して哀しくなるような品揃えではありません。ちょっと前に「問題なのは」と書きましたが、問題なのではなく、あたしなりにどうしたらよいのか、と考えているのがこの規模の書店です。
英語以外もそこそこ置いてありますから、それなりには売れています。でも、このくらいのお店ですと、英語以外の語学の本を更に並べるスペースがないのです。平台とかエンド台と呼ばれるスペース、これらの場所は英語で使われていて、それ以外の語学のために使われることはまずありません。
英語と比べたら、売れてるとは言ってもフランス語やドイツ語の参考書の売り上げなどたかが知れています。どれをプッシュして売っていこうかと考えたら、一にも二にも英語の本になるでしょう。でも、こちらとしては、その一桁少ないけれど、それなりに頑張っている語学書を作って売っているわけですから、少しでも日の目を見させてやりたいと思うわけです。お店の担当の方も「もう少しスペースがあればね」と言ってくださる方も大勢います。
でも、どうあがいてもスペースがない、置く場所がないという物理的な限界が目の前に大きく立ちはだかっているのです。この壁をどうやったら崩せるのか、それがこの時季の悩みの種です。
はい、あたしの勤務先の場合、しばしば書評にも取り上げていただくような海外小説や近現代史の分厚い本がなにかと目を引きがちですが、大きな柱どころか土台を作っているのは語学書の方であります。
ただ語学書と言っても英語ではありません。もちろん、この数年ブームとなっている日本語でもありません。それ以外の言語です。「それ以外」と言いましたが、ほぼそれで間違いはありません。主としているのはフランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、ロシア語、中国語、朝鮮語など大学の第二外国語の授業にあるようなものですが、その他にもかなりマイナーな言語のもの出しています。
や、世界には言語の種類は数千あると言いますから、出しているのはそのほんのささやかな一部ではありますが、語学学習者の方々からはそれなりの評価をいただいていると言っても自信過剰な物言いには当たらないと思います。
でも、皆さんもお近くの本屋さんへ行ってみてください。そして、その外国語のコーナーを見てください。えっ、外国語のコーナーなんてない、そういう本屋さんもありますよね。と言いますか、たぶん、日本にある本屋さんの大多数はそうだと思います。
仮に半分の本屋さんには外国語コーナーなんて無いと仮定しましょう。あながち、乱暴な過程でもないところが、あたしの勤務先的には哀しい現実ですが、では、残りの半数の書店には外国語コーナーがあるとして、英語以外の語学まで置いている本屋さんはどのくらいでしょうか? これも、たぶん数えたら半分くらいになってしまうのではないでしょうか?
そうなんです。英語以外の、いわゆる諸外国語を揃えている書店って、案外少ないものです。その証拠に、あたしの勤務先にはしばしば、しょっちゅう「フランス語の本はどこへ行けば買えますか?」という問い合わせの電話がかかってきます。比較的都会にお住まいのお客様の場合、「某某書店さんになら弊社の商品はある程度置いていただいております」といった返事もできるのですが、そういう歳が近所にない場合は、もうネット書店をお使いいただくしかない状況です。
本屋さんの立場になれば、ちょこちょこっと英語だけ少し置いてあれば十分。このあたりじゃ、それ以外の外国語の本を買いに来るお客なんていないよ、ということなのでしょう。そりゃいないことはないと思いますが、商売になるほどの人数が住んでいるのかと問われれば、こちらも口ごもってしまいます。
と、ここまで世の本屋さんの4分の3には、英語以外の外国語の本は置いていない、と述べてきたわけですが、では残りの4分の1の本屋さんはどうかと言いますと、これもかなり乱暴な水量ですが、せいぜいのところ、仏独伊西中韓の入門書シリーズみたいなものを一揃い置いている、辞書はデイリーコンサイスかプログレッシブのようなポケット版が並んでいる、そういうところが大多数です。
たぶん、諸外国語もそこそこ揃えていますと言えるのは、全書店の8分の1か10分の1もあるかないか、だと思います(←うーん、かなり乱暴な数字)。でも、それらの書店も、このところの中国語・韓国語ブームのあおりで、あっちの出版社もこっちの出版社も中国語や韓国語の初級の語学書市場に参入してきて語学書コーナーの棚を席巻し、ひと頃に比べるとフランス語やドイツ語の棚が減っています。中国語や韓国語がブームになっても、それで外国語のコーナーの面積が広がるわけではなく、フランス語やドイツ語など既存の語学の面積が減らされるだけ、諸外国語全体の棚の面積は増えないのです。
いや、減らなければよい方で、本屋によっては「もううちは、英語以外は捨てました」と言わんばかりに英語以外の諸外国語の棚を縮小してしまったところもあります。フランス語が十数冊、ドイツ語が十数冊、イタリア語とスペイン語はもっと少なくて、中国語と韓国語はやや多め、あとはなぜかタイ語とベトナム語とアラビア語の本が1冊ずつ並んでいる諸外国語コーナー、なんていう本屋は全国にたくさんあります。
ところで、語学書は実用書です。先生から薦められて、お目当ての一冊を買う場合はよいですが、自分で参考書を選ぶ場合、いろいろ手に取って見比べて、そして買うものだと思います。それが実用書の正しい選び方のはずです。
でも、こういう風に品揃えが少ない書店では選びようがありません。比べたくても比べるだけの商品が揃っていないのですから。もちろん、ものすごい目利きの担当者が、「フランス語だったらこれだけ揃えておけば十分。これ以外の本は買っても無駄だ、役に立たん」と言い切れるくらい、選び抜いた品揃えなら、それはそれでありでしょう。でも、そうでなければ、結局買う方も少ない選択肢の中から仕方なくどれか一冊を選ぶか、諦めて買わないか、都会の大きな本屋さんに行く機会があったら買うかのいずれかになるでしょう。ますます売れなくなりそうです。
で、結局、諸外国語の本は、都会の大型の本屋さん、英語以外の語学も品揃えが豊富なお店にお客も集中するようになり、そういうお店ではどんどん売り上げを伸ばしているのに、それ以外のお店では諸外国語はますます売れなくなる、という二極化が進んでいくのです。
あたしは、中途半端に諸外国語を置くくらいなら、いさぎよく英語以外は置くのをやめなさい、と言いたいです。問題なのは、売り上げを伸ばしている大型店ではなく、それよりももう少し小さいところです。小さいとは言っても、一昔前の本屋の規模からすれば十分大きいのですが、昨今できている1000坪もあるような書店に比べれば小さいという意味です。
そういう書店は、英語以外の諸外国語もそこそこ並んでいます。決して哀しくなるような品揃えではありません。ちょっと前に「問題なのは」と書きましたが、問題なのではなく、あたしなりにどうしたらよいのか、と考えているのがこの規模の書店です。
英語以外もそこそこ置いてありますから、それなりには売れています。でも、このくらいのお店ですと、英語以外の語学の本を更に並べるスペースがないのです。平台とかエンド台と呼ばれるスペース、これらの場所は英語で使われていて、それ以外の語学のために使われることはまずありません。
英語と比べたら、売れてるとは言ってもフランス語やドイツ語の参考書の売り上げなどたかが知れています。どれをプッシュして売っていこうかと考えたら、一にも二にも英語の本になるでしょう。でも、こちらとしては、その一桁少ないけれど、それなりに頑張っている語学書を作って売っているわけですから、少しでも日の目を見させてやりたいと思うわけです。お店の担当の方も「もう少しスペースがあればね」と言ってくださる方も大勢います。
でも、どうあがいてもスペースがない、置く場所がないという物理的な限界が目の前に大きく立ちはだかっているのです。この壁をどうやったら崩せるのか、それがこの時季の悩みの種です。
読んだ感想を書く