2011年4月21日

辻という字

漢字に「辻」という字があります。よく目にするのは、四つ辻などといった単語で使われる場合でしょうか? また、かつてあたしはこのダイアリーで、その「しんにょう」の点の数について書いたことがあります。

そんな「辻」という字、この漢字は、いまあたしは漢字と書きましたが、国字なんですよね。ここで漢字と国字の細かな定義について踏み込むのはやめますが、簡単に言ってしまえば、「辻」は日本で作られた文字だということです。

だからなのでしょうか。大辻とか、辻野など「辻」のつく姓が、意外とたくさんあるものだと思います。でも、姓に使われても名前に使われることはないですよね、たぶん。少なくともあたしが知っているのでは「辻之助」といった時代劇に出てきそうな名前くらいです。

と、日本人のことを書いてしまいましたが、上に書いたように日本で作られた文字ですから、漢字の本場、中国には存在しない文字です。存在しないという言い方は正確ではないかしら。ちょっと教養のある人なら「日本で作られた文字で、日本人の名前や地名に使われている」くらいの知識はあるかもしれません。そういう教養で代表的なのは大阪の「阪」とか、「畑」ですかね。

で、中国にはない文字ということになりますと、見かけは漢字みたいなのに、漢字のような中国語の発音がありません。上海を「シャンハイ」と発音しているのは、日本語読みではなく中国語読みです。「上」がサhン、「海」がハイと読むのだと、知らず知らずのうちに日本人も理解しているはずです。

さてさて、それでは日本の文字を中国人はどう発音するのか、と言いますと。日本国内でなら日本語読みでも構いません。学生時代に留学生に聞いたところ、日本人は日本語の発音で読むのだから、実生活で中国語読みを知ってもあまり意味がない、と言われました。

中国現地の場合、そもそも日本の文字以外にも難しい漢字なら、日本字と同じで中国人だって読めませんから、日本の文字だとかもとから中国にある文字だとかという違いは関係ないみたいです。それで、日本人と同じ、読めるように読む、のが原則みたいです。

ですから、当てずっぽうな読みのこともしばしばあります。

と、これはでも、あくまで友達同士の会話とかの話であって、日本でも同じように、きちんとした辞書を調べれば発音は書いてありますから、その発音どおりに読むのが正解です。

で、問題になるのは最前から問題にしている日本の文字。これは辻とか畑とか、日本でよく見かける漢字の場合、中国の辞典にも載っていることが多く、「日本で作られた文字」という説明が付いています。発音は「辻」だと「十」、「畑」だと「田」と同じ発音にしているうようです。あくまで便宜的な発音です。

ここまでは、別にどうということではないのですが、たまたま昨日、テレビのニュースで中国人の犯人が捕まったというニュースを見ていて、犯人の名前に驚いたのです。報道によると犯人の名前は「李辻錦」というようです。

あたしは、中国人が名前に日本の文字を使っているのを初めて知りました。この容疑者は日本生まれ、日本育ちなのでしょうか? 生粋の中国人だったら、日本の漢字を名前に使うという感覚は持っていないのではないかと思うのですが、どうなのでしょう? たとえが悪いかもしれませんが芸能人の「佐藤B作」っていう名前が、本名であるような違和感でしょうか?

うーん、事件そのものよりも、容疑者の名前が気になって仕方ありません。

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