2011年4月18日

底を打つのか?

このところ、都内の書店は比較的活気があります。本も、満遍なくではないですが、そこそこ売れています。あたしの勤務先に限って言えば、こんな時でも書評に取り上げられたりして、注文が殺到しているものもあり、にわか景気と言っては怒られそうですが、なんとなく元気があるような気がします。

でも、これって数字的な裏付けを取ってみると、さほどでもないんですよね。もちろんメチャクチャ悪いわけではないですが、気分よくなれるほどの好景気というわけでもない、そんなところです。

たぶん、東日本大震災という、ほぼすべての国民が思考をいったんストップさせてしまったかのような時を境に、なにもかもが一度リセットされてしまい、いや、リセットどころかものすごいマイナスからの再スタートを余儀なくされるという状況では、ちょっとしたプラスでもよいように思え、また嬉しく感じられるだけのことなのかもしれません。

バブル以降失われた二十年なんて言い方をされますが、そうは言っても、ここまでの喪失感を味わったことある日本人はほとんどいないわけで、どんなに不敬だと言われても、そこそこの平和で、高望みをしなければそれなりに生きていける安定した世の中を謳歌していた日本人がほとんどだったでしょう。もちろん、あたしもその一人です。ですから、こういった喪失感、絶望感をかろうじて味わったことがある、知っているのは、終戦を体験している世代だけではないでしょうか。

そんな、ささやかな幸せが、かけがえのない幸福に思えるこの一ヶ月余り。もしかすると、書店が元気に感じるのも「気のせい」なのかもしれないと、最近になって思うようになりました。

だって、新聞などで報道される経済界の数字って、どれもかなり厳しいものばかりですから、出版界だけが無関係に好景気なんてありえません。きっともう数ヶ月もして、ある意味「震災ハイ」な状態が冷めてくると、とてもつもない不景気が襲ってくるのかな、という気がして怖いです。

今日は、岸田戯曲賞の授賞式でした。

こういう晴れがましいセレモニーに参加していると、逆にこういうマイナス思考に振れてしまうものです。

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