2011年3月19日

読書は不要不急か?

昨日も帰りがけに書店を訪問してきました。やはり短縮営業です。店内の照明も落としているところがあります。取次からの荷物は一日おきなので、本来なら入荷しているはずの、あたしの勤務先の新刊もまだ届いていないようです。(←なんと、その新刊が入っているか問い合わせたお客さんがいたそうです!) 二日に一度の荷物なら相当量が届くはずですが、信じられないくらい少ない量だとも聞きました。

あたしの勤務先はほぼ正常な営業に戻りつつありますが、それでも停電を考慮して、午後は4時で終業にし、更には各自の判断でそれより早くあがるのも可、という状況です。ただ、お客様、書店さんにとって気になるであろう受注に関しては、今のところいつものように受け付けている、ただし搬入(出荷)に若干の日数がかかるという具合です。出版社によっては倉庫のダメージが大きく、いまだに正常に戻ることのできない社もあるようです。

むしろ今後、ガソリンだ、紙だ、インクだといった出版に必要な資材が揃うのか、そもそも印刷工場の被災状況はどうなのか、といった問題から刊行の遅れなどが出てくるのではないでしょうか? 本当に大変なのはこれから、という気がします。

ところで、書店を回っていて、あたしの勤務先がそれほど被害を受けておらず、こんな状況で言うのも憚られますが「注文があれば、どうぞ」という状況であることを伝えると、どの書店員さんも喜んでくれます。普通に仕事ができるという当たり前のことが、こんな状況では「嬉しい知らせ」「明るいニュース」になってしまうのは、なんとも不思議な気持ちです。

書店にも、いつもよりはかなり少ないとはいえ、お客さんは来ています。売り上げ的に通常よりどれくらい落ち込んでいるのかはわかりませんが、お客さんは来てくれています。だた新宿のようにターミナルに位置する書店、つまり5時以降のお客が主力となるであろう書店の場合、現在の5時終業や6時終業といった営業は相当に厳しいと思われます。

それでも、こんな時だからこそ本が読みたいというお客さんはいる、と信じて書店の方々は働いているようです。あたしも時間潰しには読書が一番だと思っていますが、さすがに停電してしまうと時間帯によってはとても本など読めません。それでも、こういう状況下で、人々に一時の安らぎを与えてくれるのは読書ではないかと思います。

と考えて、ふと気づきました。

それは出版社にいる人間の驕りではないかと。節電が言われるようになってから、たぶん娯楽産業は風当たりが厳しいと思います。カラオケボックスはやっているのでしょうか? パチンコ屋はどうでしょう? スナックとかバーとかクラブとかは営業しているのでしょうか?

なんとなく、こういった業種はこういう事態では営業すると顰蹙を買いそうな雰囲気がありますよね。でも、どんな職業にだってそれに従事している人、それで生活している人がいるわけですから、一概に「こんな時に営業しているとは何事か!」と非難するわけにもいきません。

読書がなによりの楽しみと感じる人がいるように、こんな暗い気持ち、カラオケで発散しようと考えたり、パチンコでもして忘れてしまおうと思う人もいたって不思議ではないはずです。いや、必ずいるでしょう。

確かに、行為自体を考えた場合、読書はそれ以外の娯楽、レジャーに比べて伝奇をそれほど使うわけでもないですから節電の趣旨には沿います。傍目にも「ふざけてる」「軽薄だ」といった印象を受けにくい行為であると思います。

ただ、被災地の映像を見ていて、ランドセルも教科書もすべてを失った子供たちに、本を届けてあげたら喜ばれるだろうか、避難生活の大変さを一時でも忘れる助けになるだろうか、と思いました。もちろん現時点では届けるすべもなければ、届けるような本も持っていませんが。

燃料とか水とか毛布とか、被災地ではまずこれが欲しいという品物がいくらでもあります。そんな中、届いた救援物資の箱を開けてみたら、中味は本だったとき、被災者の方々は喜んでくれるのでしょうか? それともガッカリされるのでしょうか?(←そもそも、本って重いので運んでもらうだけでもいい迷惑かも知れませんが......)

避難所の中で、お互いに話すこともなくなって、寒さに震えている人たちに、本が届けられたら、それは喜ばれることなのだろうか、いや、そんなものよりもっと必要なものがあるはずだろう、ということはわかっていますが、ふとそんなことを考えてしまいます。

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