2011年2月 1日

エジプトの本

とある書店の人文担当の方との会話です。

いま現在も予断を許さない政治状況のエジプト。古代エジプト文明など、なんとなく穏やかでのんびりとしたイメージのあった国、エジプト。知る人は知っていたのでしょうけど、そのエジプトが30年近い長期独裁政権で、国民の民主的権利が制限されていたなどと、どれほどの日本人が知っていたのでしょうか?

今回のような政変が起きて初めて現在のエジプトの政治状況を知ったという人が多かったのだと思います。かくいう、あたしもその一人です。で、その人文担当の人から、「エジプト政治関係の本なんて出していないよね?」と聞かれたのです。

あいにく、そっち方面の本は出していなくて、この時期にタイミングよく出たのは

 

こんな語学書です(左上)。エジプトの政治経済社会に関する本は出していないのです(涙)。エジプトの直前に政変が起きたチュニジアについては、こういった本を出しているのですが(右上)。ただ、その担当の方と話していて、結局、他社の本を探しても、めぼしいものが見つからないとのことです。

考えてみますと、エジプトに関する本というのは、古代エジプト、ファラオだ、ツタンカーメンだ、ピラミッドだ、クレオパトラだ、といったものがほとんどで、現在のエジプトを知るための本というのはほとんどないようです。

せいぜいが、イスラエルやパレスチナ関係の本で、仲介役として、中東世界のリーダー的役割としてのエジプトに触れた本がある程度ではないでしょうか。それも、サダトあたりの時代のものが大部分でしょう。



書店としては、いまエジプトで何が起きているのか、どうしてこういう事態になったのか、書店なりの情報発信として棚構成を考えるのでしょうけど、肝心の本が見つからないのでは、そういったコーナー作りも難しくなります。もちろん研究書のようなものまで探せば、あることはあると思います。でも、大学図書館ではあるまいし、ごくごく普通の人を相手にした本屋さんで、それはあまりにレベルが高すぎます。

結局、需要がなかったから出さなかったと言ってしまえば言えますが、出版社がサボっていたのもいけないのですよね。そりゃ、世界で何が起こるかなんて予想するのは難しいですから、なんでもかんでも出版できるわけではありませんが......

そう言えば、かつて



こういう本を出したときに、思いのほか売れたことがあります。出版時期がタイムリーだったこともありますが、チェチェン本ってその時点ではそれほど多くはなかったのでしょう。それに、なによりもこの本が新書サイズという手軽であったことが(売れた)一番の理由ではなかったかと思います。こういった本があってこそ、専門書や研究書に手を伸ばしてくれるお客様も出てくるわけで、やはり、いきなり分厚い本には手が伸びませんよね。

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