2011年1月19日

限界だね

昨夜は出版梓会の、梓会出版文化賞の授賞式でした。あたしは初めての出席でしたが、かなりの盛況でした。これが常態なのか、例年以上の賑わいなのかはよくわかりません(汗)。

取次各社の社長が新年の挨拶で、年末年始の売り上げが昨年よりよかったと口を揃えたことで、なんとなく昨夜の会場も「出版界も底を打って今年は景気がよくなるぞ、よくするぞ」的なムードが漂っていた感がありました。

まあ、出版各社にせよ、書店にしろ、それぞれ景気の善し悪しは等し並とは言えないでしょうけど、やはり業界全体としてはようやく上向きなのかな、という気がしないでもありません。というか、いい加減、不景気にも飽いた、というのが正直な気持ちです。飽いたからと言って景気がよくなるわけではありませんが、景気なんて文字通り気持ちの問題と考えて、できるだけよい要素を見つけていくべきなのかも知れません。

ところで、こういったパーティーで、あたしはしばしば思うのです。

出版は文化なのか?

って。お偉方や来賓の方が、たいていそう言うじゃないですか。

でもねー、とあたしは思うのです。だって、この業界くらいじゃないですか? 自分たちで自分たちのことを文化だなんて言っているの。他の業界は時に「某某文化」といった言われ方をするときもあるかも知れませんが、ふだんから堂々と、それも自分たちで文化だなんて言っているのは出版業界くらいしかあたしは知りません。

そんなことを言っているから、いつまでたっても景気が上向かないんだよ、と囁く悪魔のあたしがいる一方で、いやいや、やはり出版は人類の文化を支えてきた大事な営みであり、英知の一翼を担ってきたものだから十二分に文化を名乗る資格があるでしょ、と声を大にする天使のあたしがいます。

今の時代、少なくとも、これまでのように「出版は文化だ」という言葉にあぐらをかいていてはだめで、文化であるからこそ未来を切り拓いていかないと、という気構えが必要なのかも知れません。だからといって何をすればよいのか具体的に腹案があるわけではないのですが......。

ただ、何の屈託もなく、素直に「出版は文化だ」という意見には与せない自分がいることだけは確かです。この業界にいながら、そういう気持ちを抱えるのは矛盾っぽい気もします。苦しくはないですが、葛藤はあります。

それはあたかも、こんな気持ちに似ているのでしょうか?

そうか、だったら、出版界に距離をおいて見つめればいいのか(笑)。

読んだ感想を書く