結局、トーサン(倒産)?
昨夜は会社の忘年会でございました。会社と言っても全社を挙げての忘年会ではなく、あたしの勤務先の場合、編集部and製作部、営業部and宣伝部、総務部という三つに分かれての忘年会です。なんで分かれている(別々にやる)のかと言えば、確かな理由はわかりませんが、人数が多くなると会場を探すのも一苦労という事情があるのではないでしょうか?
で、そんな忘年会も無事終わり、営業日で言えばあと3日です。最後の一日は大掃除になりますから事実上はあと2日となってしまったわけです。
ここまで来たら、もう今年を振り返ってみてもよいかな、なんて思いますが、果たして今年はどんな年だったのでしょうか?
暮れになって、鳴り物入りで発売されたポプラ社の『KAGEROU』ですが、売れ行きがよいみたいですね。これに限らず、ここ数年来の傾向として、猫も杓子も一つの商品に人気が集中するという現象が挙げられます。二番手、三番手を許さない、すべてをある一つの商品が牛耳ってしまう、という感じです。
もしかすると、その先駆けは、いまや誰もが使っている「MS-Word」ではないでしょうか? 登場した頃のWordは使い勝手も悪く、機能も貧弱で、当時の定番ソフトだった「一太郎」にとても太刀打ちできるような商品ではありませんでした。
その後、ソフトてんこ盛りパソコンのシェア争いで、「一太郎」と「Word」はしのぎを削り、徐々に「Word」搭載パソコンの方が優勢になっていきました。それでも、「一太郎」はそれなりに検討していましたし、その他に「オアシス」「WordPerfect」といった個性派のワープロソフトが競争していました。
印象では一年か、二年くらいそんな状態が続くうちに、「Word」と「一太郎」意外のソフトは自然と姿を消し、そうなると一気に「Word」時代へと突入してしまった感じでした。そして今では「一太郎」はまだバージョンアップを重ねていますが、あえて「一太郎」に拘って使い続けている人がどのくらいいるでしょうか? 企業などではほぼ百パーセント「Word」と言ってもよいかと思います。
ここらあたりが、思い返してみたときに一極集中の始まりだったような気がします。当時、何かの記事で「複数のものが並び立ってお互いに切磋琢磨し合う時代は終わり、これからはデファクトスタンダードを握ったものがその市場のほとんど押さえて勝利者になる時代だ」と書かれているのを読みました。その記事はパソコンなどのITの分野について語っていたものですが、その後の社会を見ていると、その他のさまざまな分野でこういった現象を起きている気がします。
そして話は戻って出版界です。
読むのか読まないのかは知りません。ファンなのかファンでないのかも知りません。とにかく、みんなが買うから自分も買うという風潮で、『ハリー・ポッター』にしろ、『1Q84』にしろ、『もしドラ』にしろ、『これ正』にしろ、ヒットしたような気がします。『ミシュラン・ガイド』も同じ文脈でしょうか?
とにかく、それしか買わない。本屋に来て、他の本には目もくれず、その本だけを手に取ってレジに並んで会計をして店を出て行く客が増えたのもこの数年の現象ではないでしょうか。「ふだん本を読まない」どころか「本屋にすら来ない」人までを書店に向かわせた功績はあるにせよ、こういった購買行動では書店が元気になる起爆剤となり得るのか否か、不安を感じます。
出版社的に言いますと、どの本屋を回っても、それこそ地方の中小規模の書店に足を運んでも、10や20冊単位でこれらの本が並んでいる(積まれている)のを見ると不安に感じます。とにかく、今が売り時だから置いておかないと、という書店の気持ちはわかります。ある程度目立つように、それなりの数量を積まないと、という気持ちも理解できます。
でも、あれだけどこの書店でも積んでいたら、完売はありえないでしょう? もちろん最初のうちは買い求めるお客さんの数と入荷したほんの数が釣り合わないので全部売れてしまうでしょうけど、しばらくすれば需要も一段落し、入荷した本が全部売れるわけではないはずです。
村上春樹などの桁違いを除けば、出版業界はベストセラーと言ったって数万部が関の山です。仮に10万部出荷して6万部売れたとします。それだけ売れた本ならば、全部が返品になることはないとしても3万部弱は返品になるでしょう。1冊2000円の本だったら、総額は6000万円ですか? そんな金額の返品があったら、小さな出版社はとても持ちこたえられないでしょうね。
そもそも、一般の書籍なんて、大手出版社の人気作家の本でもなければ、初版3000部が平均的なところです。3000部作って、どれだけ売れるのかはその本によりますが、売れなくたって残る量は最大で3000冊です(汗)。
そういう数量、金額で日常の業務をこなしている出版社が、もしいきなりヒット作に恵まれて、桁が一つ二つ異なるような部数を作ったらどうなるでしょう? 確かにいつもとは桁の異なる売り上げが上がりますが、同じように返品も出るわけです。返品されてきた本、恐らくもう金輪際売れないでしょうね。取っておいても税金がかかりますし、場所も取ります。廃棄(断裁)処分にするにしても欠損になるわけですし、処分代もかかります。結局、売り上げが全部吹っ飛んでしまうような金額になる可能性があります。
営業回りをしていて、他社の売れに売れている本を眺めるにつけ、そこそこのヒットは欲しいと思うものの、ここまでのヒットは、あたしの会社で起こったら却って悪い方向へ進むことになるだけだろうなあと思ってしまいます。売れに売れているのに、その波が収まったときのことを考えると憂鬱になります。
そして最後は、そう、倒産です。
で、そんな忘年会も無事終わり、営業日で言えばあと3日です。最後の一日は大掃除になりますから事実上はあと2日となってしまったわけです。
ここまで来たら、もう今年を振り返ってみてもよいかな、なんて思いますが、果たして今年はどんな年だったのでしょうか?
暮れになって、鳴り物入りで発売されたポプラ社の『KAGEROU』ですが、売れ行きがよいみたいですね。これに限らず、ここ数年来の傾向として、猫も杓子も一つの商品に人気が集中するという現象が挙げられます。二番手、三番手を許さない、すべてをある一つの商品が牛耳ってしまう、という感じです。
もしかすると、その先駆けは、いまや誰もが使っている「MS-Word」ではないでしょうか? 登場した頃のWordは使い勝手も悪く、機能も貧弱で、当時の定番ソフトだった「一太郎」にとても太刀打ちできるような商品ではありませんでした。
その後、ソフトてんこ盛りパソコンのシェア争いで、「一太郎」と「Word」はしのぎを削り、徐々に「Word」搭載パソコンの方が優勢になっていきました。それでも、「一太郎」はそれなりに検討していましたし、その他に「オアシス」「WordPerfect」といった個性派のワープロソフトが競争していました。
印象では一年か、二年くらいそんな状態が続くうちに、「Word」と「一太郎」意外のソフトは自然と姿を消し、そうなると一気に「Word」時代へと突入してしまった感じでした。そして今では「一太郎」はまだバージョンアップを重ねていますが、あえて「一太郎」に拘って使い続けている人がどのくらいいるでしょうか? 企業などではほぼ百パーセント「Word」と言ってもよいかと思います。
ここらあたりが、思い返してみたときに一極集中の始まりだったような気がします。当時、何かの記事で「複数のものが並び立ってお互いに切磋琢磨し合う時代は終わり、これからはデファクトスタンダードを握ったものがその市場のほとんど押さえて勝利者になる時代だ」と書かれているのを読みました。その記事はパソコンなどのITの分野について語っていたものですが、その後の社会を見ていると、その他のさまざまな分野でこういった現象を起きている気がします。
そして話は戻って出版界です。
読むのか読まないのかは知りません。ファンなのかファンでないのかも知りません。とにかく、みんなが買うから自分も買うという風潮で、『ハリー・ポッター』にしろ、『1Q84』にしろ、『もしドラ』にしろ、『これ正』にしろ、ヒットしたような気がします。『ミシュラン・ガイド』も同じ文脈でしょうか?
とにかく、それしか買わない。本屋に来て、他の本には目もくれず、その本だけを手に取ってレジに並んで会計をして店を出て行く客が増えたのもこの数年の現象ではないでしょうか。「ふだん本を読まない」どころか「本屋にすら来ない」人までを書店に向かわせた功績はあるにせよ、こういった購買行動では書店が元気になる起爆剤となり得るのか否か、不安を感じます。
出版社的に言いますと、どの本屋を回っても、それこそ地方の中小規模の書店に足を運んでも、10や20冊単位でこれらの本が並んでいる(積まれている)のを見ると不安に感じます。とにかく、今が売り時だから置いておかないと、という書店の気持ちはわかります。ある程度目立つように、それなりの数量を積まないと、という気持ちも理解できます。
でも、あれだけどこの書店でも積んでいたら、完売はありえないでしょう? もちろん最初のうちは買い求めるお客さんの数と入荷したほんの数が釣り合わないので全部売れてしまうでしょうけど、しばらくすれば需要も一段落し、入荷した本が全部売れるわけではないはずです。
村上春樹などの桁違いを除けば、出版業界はベストセラーと言ったって数万部が関の山です。仮に10万部出荷して6万部売れたとします。それだけ売れた本ならば、全部が返品になることはないとしても3万部弱は返品になるでしょう。1冊2000円の本だったら、総額は6000万円ですか? そんな金額の返品があったら、小さな出版社はとても持ちこたえられないでしょうね。
そもそも、一般の書籍なんて、大手出版社の人気作家の本でもなければ、初版3000部が平均的なところです。3000部作って、どれだけ売れるのかはその本によりますが、売れなくたって残る量は最大で3000冊です(汗)。
そういう数量、金額で日常の業務をこなしている出版社が、もしいきなりヒット作に恵まれて、桁が一つ二つ異なるような部数を作ったらどうなるでしょう? 確かにいつもとは桁の異なる売り上げが上がりますが、同じように返品も出るわけです。返品されてきた本、恐らくもう金輪際売れないでしょうね。取っておいても税金がかかりますし、場所も取ります。廃棄(断裁)処分にするにしても欠損になるわけですし、処分代もかかります。結局、売り上げが全部吹っ飛んでしまうような金額になる可能性があります。
営業回りをしていて、他社の売れに売れている本を眺めるにつけ、そこそこのヒットは欲しいと思うものの、ここまでのヒットは、あたしの会社で起こったら却って悪い方向へ進むことになるだけだろうなあと思ってしまいます。売れに売れているのに、その波が収まったときのことを考えると憂鬱になります。
そして最後は、そう、倒産です。
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