2010年10月21日

中国の地下経済

文春新書の『中国の地下経済』読了。

地下経済と言って、あまり悪のイメージを持つ必要はありません。むしろ互助会的なもの、それがちょっと暴力団みたいなものと多少の関わりがあり、もっと大がかりになり、そして権力とも癒着していると考えればよいかと思います。

中国は、あれだけの大きな国ですから、政府が公的にやる施策だけではとてもすべての国民をフォローしきれず、そこを救うのが地下経済、国民というよりは庶民のセーフティーネットなわけです。管見の及ぶ限り、こういうテーマでこのように中国社会をまとめた本はなかったような気がします。

ですので、「地下」だから「悪」と決めつけて、それを一方的に整理・排除してしまっては、救われるはずの庶民の大部分が見捨てられ、途方に暮れることになるようです。このあたり、中国社会は本当に一筋縄ではいきません。中国には日本や欧米の富豪にも引けをとらない大富豪が存在すると同時に、信じられないほどの低所得で暮らす庶民が共存しており、それが世界的には極めて珍しいどころか、ほぼあり得ないことであるようです。

ところで、この手の中国社会をリポートした本、文庫でも新書でも単行本でも、ものすごくたくさん出ていますね。たぶん、世界中のあらゆる国の中で中国本が一番多いのではないでしょうか? アメリカやフランスだって、日本でこれだけ本が出ているとは思えません。

しかし、この手の本を読んでいると、「まえがき」などに必ず書いてあるんです。「世間には中国本がたくさん出ているが、どれも中国の一面しか捉えておらず、これでは中国の真の姿はわからない」といった文言が。

じゃあ、いったいあんたのこの著作を読めば真の中国がわかるのですか、とつっこみたくなることがしばしばです。まあ、それだけ中国という国が多面的であって、見る人によっていろんな表情を見せてくれるということなのでしょう。

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