2010年9月13日

怪訝山

怪訝山』読了。

三つの作品から成りますが、それぞれは独立したストーリーで、特に共通する人物とか街とか小物が登場するわけではありません。

一篇目は、正直に言ってよくわかりません。この世のものならぬ女、それも初老に取り憑かれた中年男の物語と言ってしまえば、それっきりですが、果たしてこの女は実在するのかしないのか、あくまで男の空想上の産物なのか。それに、この女と出会うことによって男は魂の救済を得られたのか。すべてが、あたしには消化不良気味な読後感です。

二篇目は、これまたもっと哀れな初老の男の物語。何もしていないのに、いや、何もしていないからこそ、ちょっとしたトラップにはまってしまう哀れな男の話で、これも救いがないです。でも、数十年後のわが身を見る気がして、ちょっとゾッとします。

三篇目は、三作の中では一番エロスがあります。官能というのはこういうのを言うのではないか、と思えます。でも、これも、話の展開が急すぎて、結局義父の失踪にどんな意味があったのか、それが主人公の人生にどういう影響を与えたのか、全くわかりません。

と、わからない、わからない、と書いてしまいましたが、所詮人生なんてすっきりわかることの方が少なくて、誰もがこういうもやもやとしたものを抱えながら生きているものなのかな、そう考えれば妙に納得できます。

読んだ感想を書く