2010年9月 8日

つばさものがたり

つばさものがたり』読了。雫井脩介は初めて読みました。

タイトルや装丁、それにオビに書かれた書店員さんのコメントからもわかるように、本書は「お涙頂戴」的な話です。予想されたとおりのベタな内容でした。

愛する人が不治の病で死んでしまうというストーリー展開に既視感を覚えますが、その死んでしまう主人公を中心に、母親、兄という家族構成はあたしん家と同じなので、若干感情移入しやすかった面もあります。

ただ、本書では、父親は既になくなっているという設定こそわが家と同じなのですが、妹はまだ若く、夢や希望に満ちあふれた頑張り屋さんで、兄は結婚して子供が一人いるという構成なのがわが家とは大違いです。(わが家は、あたしがいまだに結婚もせず、相手もいない状態で、妹は既婚で子供が2人、3人目がお腹の中です。)

さて、本書では、その兄の息子にだけは見える天使が登場するのですが、この天使の存在が、人々を励ますんですけど、でも結局は何もしてくれるわけではないのです。ただ、無心に天使の存在を信じている息子の言動から、勇気や希望を受け取るだけなのです。

もちろん、このストーリー展開の中で天使が奇跡を起こしてしまったら、お涙頂戴ストーリーは破綻を来すでしょうし、そもそも本作がドッチラケ、何のよさも感じられない駄作になっていたんじゃないかと思います。そういう意味では、あくまで天使が何かを起こしたりしないことに徹していたのがよかったと思います。

でも、それなら天使を登場させる意味はあったのでしょうか? 息子(主人公から見たら甥っ子)の、子供だからこその純真さ、明るさだけで十分大人たちの心を癒すことはできたのではないかとも思うのです。

しかし、こういう物語出てくる人たちってやさしいですね。あたしなんか、妹がこういうことになっても、この物語の兄ほどのやさしさは持ち得ないと思いますが......

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