2010年9月 2日

失業パラダイス

碧野圭『失業パラダイス』読了。

失業の暗さはないです。ただ、若干の卑屈さはあります。でも、それは主人公だけで、他の登場人物(失業仲間であり、同居人たち)は明るく前向きです。

ストーリーの一方の主軸となる、主人公と年上のカッコイイ女性との恋愛に、元カレが絡み、そこに仕事上のなんだかんだが被さって、という流れは、ある意味ありきたりとも言えます。

一方の軸である、引きこもりの少女が徐々に変わっていくストーリーは、これもありきたりと言えばありきたりなのですが、あたしはちょっとキュンときてしまいました。

天性の歌声を持つ引きこもりの十七歳、沙良の歌声、聞いてみたいです。あたしは人の声に震えが来るほど感動したことはないですが、今で言うならば、陳腐なたとえですが、スーザン・ボイルでしょうか? でも、本書を読んであたしがイメージした声はそんなものではなかったです。具体的に、実際の歌手では誰だ、とは言えませんが、沙良には「萌えーっ!」です。

声に「萌える」というよりは、一見ださくて、でも本当は可愛くて、人に打ち解けられなくて、自分の思っていることも上手く伝えられなくて、でも心を開いた人には素敵な笑顔を見せてくれる。そんな人物造形は、ものすごくど真ん中、ストライクです。

これも、具体的に誰というのを挙げられないんですけど、確かにそんな女の子、あたしも知っていたんです。でも、誰だったのか、中学の同級生、それとも高校の同級生、名前は、どんな顔をしていた......

すべて思い出せません。記憶のすぐそこまで出かかっているのですけど、出てこない、そんなもどかしい思いを抱きながら読み終わりました。

あたしは確かにこの本を読みながら、沙良の成長を見守りながら、ある女の子をイメージしていました。それが誰なのか、今もって思い出せないのですけど。

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