2010年9月 1日

トッカン

夏前の出張で関西へ行った折に、仲良しの書店員さんに勧められた『トッカン』。他に読みたい本、読まなければいけない本があって、後回しになっていましたがようやく読了。

ほぼ新人の社会人の成長物語、それをしっかり見守るスーパー上司という、いかにもドラマや小説などに描かれやすい人物造形なのですが、舞台が税務署であるということがよいひねりになっています。

面白いストーリーではあるんですけど、やはり予定調和な展開がちょっと物足りない感じもあります。主要な、と呼べる登場人物が何人か出てきますが、もう少し主人公と絡んでもよかったのではないかという不満も残ります。

で、特に個人的にわからないのは、ストーリーの途中、主人公が新しい友達ができたと思ったら、その友達に裏切られてしまいます。その時の主人公の落ち込み方というか、相手に対するぶつかり方とでも言うのでしょうか、そこがわかりませんし、理解できません。

あたしは、あそこまで他人に入れ込むことはないし、だから裏切られてもそれが当然だと思います。他人は必ず裏切るものです。だから、主人公の熱さが熱すぎて息苦しく感じました。主人公もあたしと同じように自分は人から嫌われる人間だと思っていて、後半、その理由を自分なりに見出すのですが、あたしの場合、中学の頃には既に自分が悪いんだということは自覚していましたし、高校の頃にはもう諦めの境地に達していました。二十代半ばでようやく気づく主人公に、なんか甘っちょろいなあ、という感想しか持てません。

もちろん小説的にはそういった主人公の人間的な成長が読者の共感を呼び、感動に繋がるのでしょうが、せっかく面白い税務署小説だったのに、最後の章が、あまりにも陳腐にきれいごとで話をまとめすぎていて、しらけてしまいました。そうは思いませんか? もう少しなんかひねりが欲しかったです。


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