2010年8月30日

マスコミの大罪

新潮新書『テレビの大罪』読了。

著者の言いたいことはよくわかりますし、かなりの部分であたしも同感しますし、あたしもずっと感じていたことでもあります。

若干、焦点がずれているなと感じるところもあり、どうせなら著者専門の医学の分野にすべて引きつけて批判を展開してもよかったのではないかという気もしますが......

で、著者はテレビを特にやり玉に挙げていますが、あたしは同じようにラジオだって新聞だって、同じ穴の狢だと思います。著者ももちろんそう思っているようではありますが、その影響力の大きさから特にテレビに的を絞って批判したわけです。

さて一つ、著者も書いていませんが、少年犯罪について一言。

少年犯罪が起こったとき、新聞もテレビも被害者よりも加害者、つまり事件を起こした少年の心の闇といったことをすぐ言い出して、さも加害者が現代社会の被害者出逢ったかのような扱いをしています。

もちろん、現代社会が生み出し犯罪という面はあるのかも知れませんが、あたしが不思議でならないのは、どうしてまずもって、真っ先に「この少年は犯罪を犯したんだ、悪いことをしたんだ、許されないことをしたんだ、してはいけないことをしたんだ」とはっきり指摘しないのでしょうか?

テレビのアナウンサーにしろコメンテーターにしろ、ましてや識者と呼ばれる人たちも、ほぼ間違いなく、加害者の少年が悪いことをしたんだという事実を指摘しません。たとえどんなに情状酌量の余地があろうとも、まずはいけないことをしたんだと、きちんと指摘してやるのが筋ってものではないかと、あたしは思います。

著者も書いているように、テレビはとかく珍しい事例をセンセーショナルに取り上げ、それを一般化してしまう嫌いがあります。だから、少年は悪いことをしたという、もっとも基本的なことをあえて指摘しないのではないでしょうか? 愚かです。

なお、著者が触れなかった、新聞記者もあまり優秀とは言えなさそうですが、「出版は文化だ」と言って偉そうにしている、出版業界の人も、実はあたしは大嫌いです。新聞記者が、「ペンは巨悪を暴き、正義を貫く」と言ったり、テレビ関係者が「われわれには国民に伝える義務がある」なんてセリフを言うときと同様、この出版界の人たちのセリフにも胸くそが悪くなります。

いま現在発行されている新聞やテレビ番組や書籍のどこに、正義や文化や教養があるというのでしょうか?



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