2010年8月29日

CD店と同じ轍?

昨日の朝日新聞夕刊に、HMV渋谷店閉店から、CDショップの苦境についての記事が載っていました。曰く、「苦境続き、HMV渋谷店閉店 存在意義探るCD店」です。

「CD店」を書店に置き換えても通じそうな記事です。出版業界も、今年は電子書籍元年と言われ、とうとうネット配信の時代に突入したわけですが、CD業界に比べると何年遅れなのでしょうか。いや、ネット配信が進んでいると一概に言ってよいものか、まだちょっと疑問も感じています。

ただ、いずれにせよ、遅かれ早かれ、出版業界もCD業界の後を追いかけるような歴史をたどるのではないかと思えます。もちろん、書籍という現在の媒体、形状はレコード、カセット、MD、CDと変化してきた音楽業界に比べ、数百年もそのままで来ていますから、その歴史と伝統の蓄積たるや、比べものになりません。ですから、そう簡単には音楽業界のように、一気にネット配信へ、とはいかないと思っていますが、ある分野(雑誌とか辞典とか?)に関しては、音楽業界と同じ運命をたどるかも知れない、とも思います。

さて、上記の朝日新聞の記事、その内容でも「音楽にこだわる専門店ならではの存在価値を模索している」の「音楽」を「書籍」に置き換えれば、そのまま通りそうな文面です。文中、「CDショップの経営が難しいのは、同じ再販制度でも委託制で返品自由な書籍類と異なり、買い取り制が基本だからだ」とありますが、書店だって、なんでもかんでも返品自由というわけではなく、それなりに厳しいはずです。

その他、「自主企画盤の制作」「オリジナル企画盤」「999円の洋楽ベスト盤」などの工夫が紹介されていましたが、こういうのって、書籍の場合、可能なのでしょうか? 長らく絶版になっていた本を書店員さんの熱心な働きかけで復刊された、というような話は聞きますが、書店初のオリジナル企画書籍ってなると、ちょっとイメージがわきません。ある意味、「本屋大賞」などがそういう「企画」と言えるのかも知れないですね。

記事の最後に、会員制の通販店を営む方の話が載っていましたが、「毎日、CDを10枚以上聴く。会員(年会費2千円)に年5~6回届けるカタログ執筆のためだ」とあるのは、さすがにCDと書籍とでは手軽さが異なるので同列に論じられませんが、それでも毎日1冊読む、あるいは2日で1冊読むといった書店員さんもたくさんいらっしゃいますし、読んだ本の感想などをポップにして店頭に飾って販促に活用している方も大勢います。すぐには結果のでない努力をこつこつとなさっている方はどこにだっているのですが、この時代という大きな流れの中で埋もれてしまうのか、踏みとどまって生き残るのか、なんとも言えません。

前にも書いたような記憶がありますが、ネット配信について考える場合、もちろんコンテンツが大事であることは確かなのですが、音楽の場合、ウォークマンに始まってiPodまで、便利で手軽で使いやすい機器(端末)が同じように進化・発達してきました。それに比べ書籍の場合、iPadにしてもケータイ(スマートフォンも含め)にしても、本を読むデバイスとしてはあまりにもお粗末、とてもiPodのように猫も杓子も買いに奔る、なんて代物ではありませんよね?

出版業界が一気にネット配信に進かはひとえに、これらのデバイスの発達にかかっていると思います。また一方、ケータイやiPadといったデバイスでも十分なコンテンツは、どんどん電子化、ネット配信へシフトしていくのではないでしょうか?

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