2010年8月17日

お金

光文社古典新訳文庫の『経済学・哲学草稿』、ようやく読了しました。

ああ、長かった、というよりも、あたし自身の理解力・読解力のなさに、ほとほと情けなくなりました。やはり、最近、読みやすい文芸書ばかり読んでいるせいでしょうか、こういった人文書は読むのに時間がかかります。

別に文芸書をバカにしているわけではありませんが、やはり本の性質がまるで違うので、惚れた腫れたの恋愛小説などを読んだ頭で人文書、それも思想書を読むのはかなりの歯応えです。とてもすんなりとは頭に入ってきませんでした。

まあ、確かに、昔から西洋哲学の本は、難しくて歯が立たない感はありましたが、大学院を修了し、論文もほとんど読まなくなり、学術書も滅多に読まなくなってしまったので、人文書を読む免疫というか、勘が戻っていない部分があったのでしょう。やはり、こういったものは普段から接していないとダメなんですね。

そんな同書ですが、一番面白くて、わかりやすかったのは「お金」の部分です。241ページから251ページにかけてです。その中でも特に
わたしは醜いが、飛び切り美しい女性を買うことができる。とすれば、わたしは醜くない。醜さは相手をたじろがせる力となってあらわれるが、その力がお金によって消滅しているのだから。......(中略)......人間の心があこがれるすべてのものをお金で自由にできるわたしが、人間の能力のすべてを所有していないはずはない。とすれば、わたしのお金は、わたしの無能力のすべてを、その反対物に変えるのではないのか。
といった箇所とか
誠実を不誠実に、愛を憎しみに、憎しみを愛に、徳を悪徳に、悪徳を徳に、奴隷を主人に、主人を奴隷に、愚鈍を知性に、知性を愚鈍に転化するのがお金なのだ。
といった箇所、そして
あなたが愛しても相手が愛さず、あなたの愛が相手の愛を作り出さず、愛する人としてのあなたの生命の発現が、あなたを愛される人にしないのなら、あなたの愛は無力であり、不幸だといわねばならない。
ってあたりが、特に心に響きました。

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