2010年6月22日

ガイブンの売れる書店

とある書店営業先でのお話。

担当の方曰く、海外文学が売れない、「1Q84」とかあったけど、文芸全体としてもあまりよくなくて、どうやったら売れるのでしょうか、と。

また曰く、自分の勉強不足が一番の原因なんでしょうけど......。とりあえず、新刊や売れているもの、話題になっているものは平積みや面陳もしていて切らしてはいないはずなんですが、と。

もちろん特効薬など持ち合わせていないあたしは営業マン失格と罵られても返す言葉もありませんが、せめてヒントになるようなこと、何か考え方の切り替えができるような気の利いたセリフの一言も言えなかったのが、もっと情けないです。

で、その後、多少自分なりに反省もしつつ悶々と過ごしているわけですが、ただ一つ、絶対とまでは言い切れないのですが、海外文学の売れる店の傾向ってのがあるような気がしています。

売れると言っても、何から何まで書店の売り上げデータが見られるわけではないので、あくまでわかる範囲からの推量なんですけど、そこから見えてくるのは「売れる店ではどんどん売れるのに、そうでない店ではなかなか売れない」ということです。

なんだ、当たり前じゃない、と言われそうですが、この一年くらい、ますます顕著になってきたような気がします。で、あたしなりの分析をしてみますと、大手の文芸書でも、海外文学となるとそれほどの部数を作っているわけではないはずです。となると、全国津津浦々の書店にまでその本が行き渡るなんてことはありえません。その結果、少ないガイブンがどういうお店に並ぶかというと、大都市の大型店が中心になります。

この配本の傾向(偏り?)は、書店の集まりなどで、しばしば出版社に対する不平や要望として書店員の方らから出される問題です。

それはともかく、大手ではないもう少し規模の小さい出版社の本となるとますますその傾向が強くなり、大都市のターミナルにある大型書店に重点的に配本されるようになります。海外文学好きの読者は、昨今のインターネットやブログ、ツィッターなどでどういう新刊がどこから出されたかの情報をかなり素早く手に入れているようです。そして書店に奔ります。

出版社があまりたくさん作っていない、重版なんてまずありえない、ということも心得ているガイブン好きの読者は手に入らなくなる前に買わないと、という思いを持ちます。ですから、刊行されたという情報が入れば即本屋さんに向かうわけです。

そんなとき、こういう言い方を出版社の人間がしてはいけないのかもしれませんが、「うちの近所のあの本屋じゃ、とてもこの本は入荷しないよな」とガイブン好きは判断します。そして「とにかく現物を手に取って見るんだったら都心の大型店へ行かないと」という思考経路、行動パターンになります。

小さい出版社が出している、初版部数の少ない本でも、あの書店なら当然入荷しているはずだと思われている書店、そういう書店の売り上げは配本当初からグングン伸びているのに、それ以外の書店では全く売れていない、そういう傾向が近年とみに強まりつつあるような気がします。

不景気だからなのか、デジタル化が進むからなのか、そんな理由はどちらも当てはまらない気がする、昨今の流れです。

で、営業マンとしては、

「そんなこと、言われなくなってわかっているよ、だから大型店にばかり配本しないで、もっと広く配本してよ」

という意見もよーく理解できるのですが、「売りたい」ってときには、ある程度「見せる」要素も必要で、「見せる」ためにはある程度の量(冊数)を積んでくれる、並べてくれるお店が必要なわけでして......

いかん、いかん、なんかすごいイヤな言い訳してますね。

本当は「何冊も置いてはいないけど、これはという新刊はちゃんと1冊は置くようにしているよ」という書店を、都心以外にも作っていかないとならないのでしょう。

でも、現実は「その本屋に行かないと置いてないから」という理由でお客さんが集中し、集中するから売り上げも伸びる、売り上げも伸びるから出版社の配本もますます手厚くなる、という循環(一概に悪循環とも言えないです)になっているんですよね。

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