2010年6月18日

彼女との上手な別れ方

彼女との上手な別れ方』読了。

当初、タイトルからは、恋人同士の切ない別れ話かと予想していました。昨今ありがちな、不治の病か突然の事故で最愛の彼女を失った主人公が、彼女との想い出を振り返りつつ、勇気と希望を取り戻し、未来への第一歩を踏み出すストーリー、そんな内容です。

ある意味、オンナが突然死んでしまって、残された側のオトコが新しい自分を見つけて人生を歩み直す、という基本的な骨格は合っていたのですが、予想した内容とは全然異なる話でした。

三人組のストリッパーの女性とその付き人兼マネージャー兼照明係兼運転手の初老の男性、以上の四人が乗った車が、タクシーを止めようと車道に出てきていた男性を轢いてしまいます。男性も自分は大けがを負ったはずと思いつつ病院で目が覚めると、体には傷ひとつなく、看護師や警察からは「君は道路で転んだだけ。その君をよけようとした車が電柱に激突して乗っていた四人は即死」と聞かされるのでした。

轢いてしまった四人も目が覚めますが、目の前には自分たちの遺体があり、どういやら自分たちは事故で死んでしまい、いまの自分たちはその霊魂、成仏できずにこの世をさまよっている魂だと気づきます。もちろん、四にはお互いが見えていて話もできますが、現実世界の物には触れないので、閉まっているドアひとつ開けられません。(すり抜けられないのが、幽霊の常識に反する気もしますが......)

そんな四人ですが、なぜか轢かれたはずの男性にだけは、彼らの姿が見え、話もできるのです。最初、男性は自分を轢いた慰謝料を取ろうと、死んだということも知らずに四人を捜し回り、偶然ユウコのアパートでユウコ(の幽霊)と出逢います。ユウコもこの男だけが自分たちの姿を見ることができ、話もできることに気づきます。

そこで、死んでしまった四人は、この男性を使って、この世でやり残したことをやり遂げ、無事に成仏しようとするわけです。

といった内容の話で、具体的にどんなことをしようと(やらせようと)するのか、四者四様のやり残したこととは、そしてその結末がどうなるのかは読んでのお楽しみです。主人公の、轢かれたはずのオトコは、嫌なヤツです。金と女の子としか考えない、チャラチャラとして、刹那的快楽主義者です。そんなオトコが慰謝料欲しさに四人のためにいろいろ奮闘させられるのです。

まあ、ここまで書けば、大きなながらは予想がつくと思います。たぶん、その通りの結末です。死んだ四人のキャラは、それぞれに面白いのですが、もう一人の主人公ユウコに比べ、なんとなくエピソードも陳腐で、印象も薄いです。そこが残念。

身よりもなく、一人残されるユウコの息子(10歳)も、いかにもというキャラクター設定ですが、もう少し学校でのこととか、ユウコが生きていた頃の場面が織り込まれていてもよいのでは、という気もします。

あと、四人の姿や声を、ただ一人わかる主人公に関しても、あたしは最後にもうひとひねりというか、大ドンデン返しがあるのかと期待しながら読み進んでいったのですが、それはなかったです。

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