2010年6月15日

四十九日のレシピ

四十九日のレシピ』読了。

お涙頂戴ってほどの感動作ではなかったですが、ほのぼのとした味わいのある作品です。もちろん涙腺の緩い人なら泣くポイントには事欠かないとは思いますが。

母親が亡くなり、意気消沈している父の元へ、これまた夫の浮気・愛人の妊娠という夫婦の危機を抱えた一人娘が戻ってきます。これだけで、もうどよーんとして暗い舞台設定なのですが、そこへ金髪・ガングロの女の子が突如現われ、母親の生徒だったと言い、四十九日までの父親の面倒を見るように言われていたと言い出します。

ガングロ・金髪なんて、もう時代遅れって感じですが、実際この女の子が娘と一緒に東京へ行くシーンがあり、渋谷ではそんなメイクの子が誰もいないのを見てショックを受けるシーンなどがあり、笑わせてくれます。個人的には浜田ブリトニーをイメージして読んでいましたが...。

それにしても、亡くなった母親というのが父の後妻で、出戻りの娘からすると継母なのですが、これが実の親子以上の結びつきを持っていて、母親も自分の死後の二人を本当に心から心配していたのだということがわかります。

物語は、その女の子が連れてきた友人、ブラジルからの出稼ぎ青年を加えた四人が、四十九日の大宴会を開く準備を進めるのが基軸で、そこに娘の夫の浮気と姑の介護などが加わります。娘の嫁ぎ先の描かれ方、特に夫やその姉妹の性格描写がやや類型的すぎるのが面白くないです。それに父親の姉のキャラクターも今一つ変なインパクトだけを与えて終わってしまっている感があります。

そして何より、実は、母に言われてやってきたという金髪の女の子が、ストーリーの中であまり目立っていないのが、どうなのよ、という気がします。オビではこの女の子の活躍で父と娘が元気を取り戻していくように書かれていますが、読んでみるとそこまでの活躍を少女がしたのかどうか、微妙です。

もちろん、この少女の存在を抜きには父と娘の再出発はあり得なかったと思いますので、彼女の存在、出現はこの父娘にとっては決定的なものであったのでしょうけど。この外見に比べて、実際にやっていることの控えめなところ、このあたりの疑問は、最後の最後、父親が気づいた(妄想した?)少女の正体と繋がっているのかもしれません。

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