2010年6月14日

文芸書断ち?

夏色ジャンクション』読了。

夏を前にして読むには最適な、爽やか青春成長ストーリーではないでしょうか? ややボリュームがあるように見えますが、読み始めればそんなことは感じず、一気に読み終わってしまいます。

簡単なストーリーを述べますと、恋人が親友と一緒にいなくなり(つまり裏切られたわけです)、なおかつその親友の甘言に乗せられて貯金を全部失ってしまった主人公のサラリーマンが、そのショックから立ち直れず自暴自棄になって会社も辞め、サラ金の取り立てから逃げるように愛車を住み処とした路上生活者になります。

そんな車上生活を続けていた主人公の前に、恰幅がよく人柄もよさそうな老紳士が、自分を山形まで連れて行って欲しいと頼んできます。ちなみに舞台は名古屋あたりのようです。交通費も食事代もすべて老紳士・勇が出してくれるという話に主人公・信之はサラ金の取り立てからも逃れられるとこの頼みを承諾、二人は車で山形を目指します。少しでも時間を稼ごうと、勇の地理不案内をよいことに信之は遠回りをしながら山形へ向かいますが、途中、勇が大事そうに抱きかかえているカバンの中に700万もの大金(現金)があることを知り、道中でこの金を奪って人生をやり直そうと企みます。

山形までもう少しという福島まで来たところで、ヒッチハイクで青森を目指しているアメリカ娘・リサを、行きがかり上、車に乗せることになり三人は青森へ向かいます。

と、これ以上書くとこれから読もうと思っている人の楽しみを奪ってしまうでしょうから止めておきますが、予想できるように、信之とリサとの間に芽生える淡い恋物語、信之は勇の金を奪うのか、いなくなった信之の元彼女はその後どうしているのか、そんなことが描かれ大団円を迎えます。

自暴自棄になって会社を辞めて借金まみれの生活を送っているというのは、必ずしも主人公・信之くらいの年齢でなくとも、このご時世そこらじゅうにいるでしょうから、そんな人たちに勇気を与えられる作品かもしれません。もちろん現実生活はこんなにうまく事が運ぶわけはないのですが......(汗)

それにしても、リサと信之の間のラブストーリーですけど、ふつう、こういう出逢いがあっても、「リサにはきっとアメリカに恋人がいるのではないか?」って思わないものでしょうか? そんなこと気にしないで今の自分の気持ちに正直に、と言われるかもしれませんが、あたしなどはそういうことを気にします。というか、きっと地元に恋人がいるだろうから、一歩も二歩も退いてしまうでしょう。異国の旅の途中で出会うという、ある種「ストックホルム症候群」的な状況なわけで、そんな状況で抱いた気持ちは、あたしには信じられないのです。

まあ、それはおいといて......

本書はほぼ一日かからずに読み終わってしまいまして、昨日はその後、いま話題の『四十九日のレシピ』を読み始めました。これももう3分の2か4分の3くらい読んでしまいました。やはり文芸書、特に日本人作家の作品は読みやすいですね。

こんなのばかり読んでいるから、昨日書いたように西洋哲学の概論書などに歯が立たなくなるのではないかと思います。しばらく文芸書は読むのをやめて、ちょっと小難しい哲学書を読むようなことをしないとダメかしら、そう思う今日この頃です(汗)。曰く、「文芸書断ち」です。願掛けなどでよく言われる「酒断ち」「塩断ち」みたいなものです。

ただ、同じ哲学でも中国哲学だとそれなりに理解できるんですよね。やはり、中国哲学は形而上学的、思弁的にならないからでしょうか?

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