2010年6月 5日

パリのグランド・デザイン

中公新書『パリのグランド・デザイン』読了。

ルイ14世時代を中心としたパリの都市計画の話、という感じの本かと思いきや、主として語られているのは主要な宮殿(邸館)の計画、設計、施工についてです。例えば、インフラ面でパリをどう改造しようとか、そういった話ではありません。

それにしても、ルイ14世の頃まで、パリは単なる都市の一つで、当時のフランスはイタリアから見たら文化的には田舎も田舎、後進国だったというのは、ヨーロッパ史、特にフランス史などを専門にしていないあたしにはとても新鮮でした。それに、建築デザインでも、イタリア的なるものとフランス的なるものの葛藤、そして国王や実力者を巡る権力争い、それに対外戦争も関わって、宮殿の建築計画も二転三転、時には数年間もほったらかされてしまうこともあったようです。

もう少し庶民の暮らし、庶民目線の記述が欲しいとも思いますが、資料があまり残っていないのでしょうか? ただ、本書で取り上げられた宮殿などは図面もかなり残っているみたいで、本書でも図版が豊富に引用されています。

あえて注文をつけるなら、せっかく図面をたくさん載せてくれているのですから、東西南北を指示して欲しいと思います。どちらが南向きなのか、ということは建物の配置の上ではかなり重要だと思いますが、ヨーロッパではそうではないのでしょうか? ベルサイユなど有名な鏡の間が西向きの部屋だったなんて、意外です。

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