2010年6月 1日

共産主義の影

岩波現代文庫の『宋家王朝(上)』『宋家王朝(下)』読了。

上巻を読むと、孫文のだらしのなさがよくわかりましたが、下巻を読むと蒋介石のダメさ加減がよくわかります。

それにしても、不思議なのは、欧米にしても蒋介石にしても、何故あれほどまでに共産主義を嫌い憎むのでしょうか? 宗教の否定がキリスト教の否定となり、それが許せないというのが欧米人の思考回路なのでしょうか? そうなると、イスラム教徒に対する敵愾心と同じようなものですね。

でも欧米の場合は、それならそれで理解できますが、蒋介石の場合はどうなのでしょう? 彼と国民党が酔ってたつ資本家の既得権益を共産党は破壊するからというだけでは、国の存亡を前にして、それでも日本よりは共産党を目の敵にする理由がわかりません。第一、蒋介石がそこまで資本家のことを考えていたようにも思われませんし。

いずれにせよ、共産主義が崩壊した現代を生きるあたしには、当時の「共産党の脅威」というのがどうも理解できません。日本も同じように「満洲を録らなければソ連が来る」という恐怖感を国民全体が共有していた節がありますが、この当時の人々の意識って、頭では理解できても実感は出来ないです。

またアメリカが滑稽なくらい国民党、というか蒋介石と宋一族に肩入れしてしまったのも、もとをたどれば宋一族の先代チャーリーがキリスト教徒だったから、この一点が大事であったように思われます。宋一族は皆キリスト教徒で、自分たちと同じ価値観を有する仲間であるという刷り込みがアメリカ人に出来上がってしまったかのようです。

それにしても、宋家三姉妹といったドキュメントや映画もあったように記憶していますが、これまで三姉妹はもう少し仲がよかったのかと勝手に思い込んでいましたが、それが全く違っていたと言うことがよくわかりました。それに宋一族の金に対する汚さも。

中国史として読むには弱い部分もありますが、この本はあくまで宋一族の物語なのでよしとしましょうでも全体としては、宋慶齢に関する記述が薄い気もします。

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