2010年5月23日

研修旅行雑感

先にも簡単に書きましたが、今回の出版梓会の研修旅行では、名古屋地区の書店を回りました。名古屋地区は東京圏、大阪圏と並ぶ日本の大都会、やはり書店の数も多いです。ですので、二日間の旅程では網羅的に訪問できるわけもはなく、いくつかの書店に絞っての訪問となりました。具体的にはこちらの地図をご覧ください。

話として面白かったのは、正文館さんでうかがったお話。そこの会長さんが愛知地区の書店協会の理事でもあり、かなり積極的に市や県に働きかけを行なっているようです。その一例として挙げていらっしゃったのが、万引き防止の条例の強化です。

具体的には、本来、未成年は売買行為は禁止されているのに、事実上高校生などが万引きしたコミックをブックオフなどの古書店に持ち込んで現金化するのはノーチェックになっています。形式的には親の同意が必要となっているのですが、それを親の同伴がないと受け付けないように条例を変えて欲しいと嘆願しているそうです。

その他、図書館の複本問題も挙げていらっしゃいました。ベストセラーを公共の予算で複数購入する必要があるのか、という至極もっともな意見です。あたしは昔から自分自身が「欲しい本、読みたい本、必要な本は借りるのではなく買う」派なので、異議はないですが、この不景気、図書館を積極的に利用する人の気持ちもわからなくはありません。

市への嘆願としては、どの図書館も同じように本を揃えるのではなく、図書館ごとに特色を出すような蔵書にして欲しい、とのことでした。これ、書店ならわかりますが、市民サービスとしての図書館の場合、どこまで特色を持たせてよいものか、議論が分かれそうですね。「特色」と捉えられればよいのですが、「偏り」と見られてしまうと、市民からの不満が出てきそうです。もちろん、市内であれば、何処の図書館の本も借りられるでしょうが、やはり目で見て触って選びたいものでしょう。

あと、教育的効果の問題と絡めて、電子書籍の教科書分野への波及にかなりの関心を持っているようでした。電子書籍は、もはや出版界のどの会合でも話題にならないことはない、今まさに旬の話題です。今後どう展開していくのか不明な点も多いですが......。個人的にはアップルの思惑どおりに進んでいくのだけは避けたいところです。

さて、今回の旅行、名古屋地区の訪問だったのですが、なぜか泊まりは岐阜県の長良川温泉。五木ひろしの曲が頭の中を流れるなんてことはありませんが......(汗)



鵜飼いこそ見物しませんでしたが、飛騨牛は堪能させていただきました。そして二日目の最初の訪問は書店ではなく、旅館の目の前にある金華山、岐阜城見学でした(汗)。



天気もよく、爽やかで、ご覧(↑)のように素晴らしい眺望でした。



生涯の伴侶が早く見つかりますようにと、願掛けの意味もこめて、こんな碑を写真にパチリ、です(汗)。山内一豊の名前を岐阜で目にするとは、意外でした。あたしの日本史の知識なんて、こんなものです。お恥ずかしい。



で、二日目の訪問店の一つ、フタバ図書さんです。こう言ってはなんですが、イオンモールに入っているので、既視感が先に立ってしまいます。



写真にもチラッと写っていますが、このフタバ図書さんは「買い取り」もやっています。下の写真が、店内の看板です。



店内の一角がリサイクルコーナー、つまりは古本コーナーになっています。商品管理がどうなっているのかよくわかりませんが、特に新刊書コーナーとの境にゲートのようなものはありませんでした。



「本はまだまだ読まれたい」とはその通りだと思います。同じく、フタバ図書店内の掲示です。個人的には、せめて「売る前に、最後まで読もう」という一言も欲しいところですが......



フタバ図書さんの店内見取り図です。オレンジ色の部分が新刊書、右上の深緑色部分が古書コーナーで、レジはそれぞれ別になっています。



フタバ図書さんは、同じ店内に新刊、古書を一見したところ境もなく並べて売っている感じですが、二日目に訪問したもう一軒、こちら(↓)は流水書房さんですが、写真奥の方にブックオフがあります。つまり新刊書店と古書店が並んで店を構えているのです。



正確に言えば、ブックオフが新刊書店を併設している(経営している)わけで、このホームセンターの2階フロアはすべてブックオフがやっている店舗です。書籍だけでなく、ゲームや雑貨、貴金属まで扱っています。ただし、ブックオフなので買い取り品、つまり中古品ですが。

ブックオフの弱点として、お客さんが売りに来たものを並べているため、別のお客さんの立場から見たときに探している本、欲しい本が必ずしも店頭にあるとは限らないということです。それを新刊書店を併設することによって補おうというのが、このお店の、そしてブックオフ側の戦略のようです。

正直、市街からやや外れた立地のホームセンターの二階で、本を買うようなお客がどのくらいいるのか、ブックオフとしてもデータを蓄積するにはまだまだ時間がかかりそうです。これが同じ名古屋でも名駅周辺や栄とかに出店していたのであれば、全く異なった結果が出るのかもしれません。

それにしても、ブックオフが新刊書店を買収というニュースは出版界でも話題になり、賛否両論渦巻いた感もありますが、実際のところどうなのでしょう? しばしば、ブックオフが近所にできると書店は云々といった話を聞きますが、実際の影響とかメリット、デメリットを調査したものってあるのでしょうか?

ブックオフなどは、新刊書店からすると、そんなに目の敵にすべき対象なのか、という思いもあります。例えば、神保町にある古本屋と三省堂、東京堂などとの関係を見ると、一概に悪いことばかりではないような気もします。もちろん、本の町として世界にも知られた神保町とそれ以外の街では、本を取り巻く環境が全く違うでしょうけど、お客側からすれば似たようなものではないかとも思います。共存できる可能性はあると思います。そんな実験をやっているのが、この流水書房とブックオフなのかもしれません。

でも、上にも書いたように、もう少し違う立地でも試してみて欲しいですね。今の場所での一年後、二年後の結果を見ただけで結論を下すのは性急に過ぎると思います。それに、両店舗の配置とか、両店舗のスタッフの交流など、実験してみたい(実験してもらいたい)点はいくつもあります。

それと、「流水書房」ではなく、隣がブックオフなのですから、店名を「ブックオン」に変えたらどうでしょう?

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