2010年4月20日

本と本屋がなくなる日

昨日の営業回りの途次、ちょっと気になっていたので購入したのが「週刊現代」。(もう一つ、「歴史街道」も購入。なんたって、特集が柴五郎と北京籠城、東洋文庫にありますね!)

なぜかと言いますと、その中の記事の一つ「本と本屋がなくなる日」を読みたかったからです。まあ、先に結論的な感想から言ってしまいますと、読んでみたからといって、それほど驚くようなことが書いてあるわけでも、あたし的に新しい知見があったわけでもないんですが、それでも6ページにわたる特集記事。この手の週刊誌の特集としては力が入っていたと思います。

記事の内容は、つまりは電子書籍の衝撃ってことです。やれ本屋がなくなるの、取次は要らなくなるの、そもそも出版社だって不要になるでしょ、といった議論がアメリカの事例などに触れつつ書かれています。それらはそれで面白いですし、例えば5年後にはどうなっている、10年後には電子書籍と紙の本とのシェアは何対何だ、といった話は、論者によって数字に差があるものの、確実に電子書籍のシェアが伸びるという方向で、ほとんどの論者の意見は一致しているようです。

それに対する方策は、あたしの勤務先だってしっかり準備をしないとならないでしょうが、特に具体的な動きがあるわけではありません。あたしだって、何ができるのか、と問われるとよくわかりません。社員一丸となって知恵を出し合わないといけないのでしょうが......

ひとつ、こんなことやってみたらと思うのは、あくまであたしの個人的な夢想、妄想ですが、毎月の出版物、あたしの勤務先ですとだいたい月に10点強を出しています。これらの新刊の「まえがき」「目次」「あとがき」、それに「最初の数ページ」を月額会費200円くらいで閲覧できるようにするんです。正確に言えば、キンドルなどの電子書籍リーダーに配信するんです。200円が妥当かどうかはひとまずおきます。このくらい安くないと有料会員が増えないと思うからです。

で、購読者は配信された部分を読んで興味を持ったら書店に買いに行く、注文を出す、興味がわかなかったらそれっきり、というサービスです。サービスというか、販促、宣伝ですよね。電子書籍で立ち読みをできるようにするという寸法です。やはり、どんな本かわからずには買えないと思いますから、目次と数ページだけでも読めれば、だいたいの予想はつくのではないでしょうか?

もちろん、本屋で紙の本を買わなくても、気に入ったら残りの部分も全部端末にダウンロードすることも可能なようにしておきますが、あくまで実際の本を売るための宣伝という位置づけです。よく、パイロット版なんかを作って配布したりするじゃないですか、あれの電子版です。

だったら、タダにしろ、という意見もあるかと思いますが、目次と数ページ分の配信ですから、多少の手間賃をいただいてもよいかと思います。10数点分が月に数百円なら高くはないと思いますが......。これを欲を出して1000円とかにしたら絶対お客は寄りつかないと思います。

それと、電子書籍が普及した場合、もう一つ流行りそうなのは、製本業ではないでしょうか? 前にもちょっと書きましたが、ヨーロッパなどでは気に入った本には独自の装丁を施すという文化があります。まさしく自分だけの本、調度品と言ってもよいようなものです。

そこまでしてしまうと金額がものすごく高くなりますが、そういう需要はあると思います。電子的にダウンロードしても、やはり紙の本の形で残しておきたいという欲求は残ると思うのです。ただ、こういった高額なサービスは商売としては成り立つのか厳しい面もあると思います。なので、ある程度、選択肢を用意しておいて、そこから選んでもらうというスタイルなら、そこそこの値段で提供できるのではないでしょうか?

こんなサービスを書店がやったらどうでしょうか? 特に丸善などは文具売り場があります。三省堂もやってますよね? 独自の文具部門を持っているところなら、そちらのノウハウで意外と簡単な準備でスタートできそうな気がします。

あとは、(いま現在、どこまで仲間なのか知りませんが)リブロにはロフトがありますし、啓文堂にはアートマンがあります。そういった系列会社の文具部門と協力して、電子初期の製本サービスを本屋が受け付ければ、それなりに需要の喚起は可能だと思います。

いかがでしょう? まだまだハードル、高いのでしょうか?


読んだ感想を書く