2010年3月 7日

台北の夜

早川書房のミステリ文庫『台北の夜』読了。先週の京都出張前から読み始め、出張中の移動時間や、夜ホテルのベッドで寝る前に読んでいて、帰りの新幹線の中で読了しました。

それにしても、あたし、ハヤカワのミステリ文庫なんて初めて読んだのではないでしょうか? なんでミステリーなんかに手を伸ばしたかと言われれば、ただ単に「台北」という文字に引かれて、ですかね? それと著者が中国系だったので面白いのではないかと期待したところもありました。

で、感想ですが、ミステリーとは言っても謎解きという感じではないです。犯人捜しもありません。主人公はアメリカ在住の中国系、40過ぎの独身男性で(←わが身を重ねてしまいます!)、母親からは結婚しろと常に言われ続けているようですが、アメリカに渡ってモーテルを経営していたその母が突然亡くなってしまいます。主人公は、母親の遺言もあり、10年前に家を飛び出たきり音信不通の弟を捜しに台北に向かいます。着いた先、台北は両親の故郷でもあり、自分のルーツでもあるのですが、アメリカで生まれ育ち、中国語も片言しかできない主人公には異国な感じです。そんな台北で弟を見つけたのですが......

率直に言いまして、長いです。いや、大長編と呼べるほどの長さではないのですが、この内容でこの長さは引っ張りすぎではないか、というのが偽らざる感想です。もう少しコンパクトにまとめることも可能だったと思いますし、途中出てくるグレースや、そのボーイフレンドのAは何のために登場していたのか、今の台湾を描こうとして政治問題にも触れていますが、それが話の本筋とどう関わっているのか、今一つわかりにくいというか、有り体に言えば、無駄なんじゃないかと思えました。

それと、読んでいると主人公の煮えきらなさにいらだちを覚えますが、これが儒教的、中国人的な家族観なのでしょうか? それにしても40を過ぎていながら分別の悪い、青臭いオヤジだなあと思ってしまいます。

結論を書いてしまえば、弟は犯罪に手を染めていて、最後の最後には主人公も弟を庇うのではなく、弟の犯罪行為を告発しようと決心したみたいですが、物語はそこで終わっています。訳者あとがきではアメリカでもその後を期待する読者の感想が多いらしいですが、どうでしょうね?

警察もつるんでいるので、警察に告発しても無駄で、たぶんマスコミにリークするのではないかと思われますが、弟の犯罪が、台湾の裏社会から考えれば、それほど凶悪なものではないですから、どれだけセンセーショナルな扱いになるか疑問です。なんか結局は徒労感のみに終わってしまうような気がするのです。

上に書いたような家族観があるにしろ、結局そういう結論に達するなら、もっと早い段階でできただろうに、という思いもしますが、弟自身が主犯だったというのは最後にならないとわからないので、主人公には無理だったでしょうか? でも、このどんでん返しは途中で読めますけど。


それにしても、また台湾行きたいなあ、ジュンク堂も2軒目ができるし......


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