2010年2月20日

著作権の世紀

集英社新書の『著作権の世紀―変わる「情報の独占制度」』読了。

この手の、著作権などをテーマにした本は、文筆業をはじめとした業界の方が書くものと、本書のように法律の専門家が書くものとがあると思います。

前者の場合、著作権問題についての熱い思いというのはわかりますが、実のところ「だからどうなの?」という読後感がぬぐえません。著作権よりもさらにそういう思いを感じるのは再販制など出版業界の慣行に関する著作などの場合です。

それに比べ後者の場合、そういった業界に関する熱い思いというのは控えめで、むしろ一歩下がった冷めた目で問題の本質を突いてくれていることがあります。つまり、どこが問題でどこが問題ではないのか、ということです。そして、そういう文章を読んでいると、この業界にいる人間がどれだけ独りよがりであるかがわかったりします。

さて、本書を読んでいて一番面白かったと言いますか、へえーと感じたのは、著作権の延長問題です。現在、欧米では死後50年から70年に延長されている著作権の保護期間ですが、日本は議論の真っ最中、とりあえずは、いまだ50年です。

やれ、ミッキーマウスのためだとか、この著作権の延長問題は海外でもかなり議論されていますが、経済学者の推計によれば、20年延長したからといって、著作権保持者(たいていの場合は遺族?)に入る収入(延長された20年で発生する印税)はほとんどないそうです。著作権が創作者の生活の糧となり、次への創作への意欲となり、遺族にとっては遺産を継承していくための、ある意味「保険」であるにもかかわらず、20年延長しても、ほぼ入ってくるお金はゼロだというのですから笑っちゃいます。まあ、ミッキーマウスとか、本当に限られたごくわずかな例外を除いては、これが真実、現実でしょう。

それと本書の後半に書かれている、著作権ではないが、さも権利のように思われている問題に関する部分も面白かったです。例として挙がっている、「自分の飼い犬(猫)の写真を勝手にブログで公開された」といって肖像権を訴えても、犬や猫は物であり、物には肖像権はない、という指摘は、昨今の犬・猫などのペットをバカ可愛がりする飼い主に冷や水を浴びせるよいきっかけになるのではないでしょうか。

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