2010年1月24日

初夜が終わった

数日前から読み始めた『初夜』読了。

今より少し前の時代、まだまだ性の奔放さは認められていない頃、一年の交際期間を経て結婚式を挙げた若い男女。キスこそ経験済みながら、それ以上には進んでいない二人が、晴れて初夜を迎えるわけです。新郎は自分に自信がないものの、なんとか初夜を成功裏にやり遂げたいと思い、一方の新婦は実はセックス恐怖症であることを相手に言い出せないでいる、そんな緊迫感の中で夕食をとる二人です。

そしていよいよベッドイン。その合間に、二人のこれまでの交際がフラッシュバックされ、初々しい恋愛時代が回想されます。しかし、結局、初夜は無残にも失敗に終わるのです。

ここまでのストーリーであれば、ここから二人がお互いをさらけ出し、肉体関係だけが愛ではないと認め合い、次のステップに踏み出す物語なんだろうと予感させます。そうすれば、いずれは愛のあるセックスも可能になるだろうと。

ところが、間に挟まれる、これまでの二人の交際の様子が、徐々に違和感を覚える流れになってくるのです。「あれ、なんか、この二人、本当に相性バッチリなのかな?」と傍目にも感じしてしまいます。うまくいかない二人の結婚生活を暗示するかのような二人の交際期間の描写です。

初めてのことに失敗しホテルの部屋を飛び出した新婦を、しばらくして追いかける新郎。ホテルの近くの浜辺で、ここで本音を言い合って、より深く相手を理解する場面のはずなのに、若い、というか、青い二人は、そんな余裕もなく、相手を理解できないまま離れてしまいます。「誰にでもありますね、こんな別れが」というありきたり感想がつい口からこぼれる展開ですが、確かにその通りだと思います。

あたしは、幸いにして、こんな別れというのは経験したことがないのですが、それは恋愛をしたことがないからであって、それはともかくもう少し他人と積極的にかかわろうとすれば、今の人生がもっと違ったものになっていただろうなあ、とは思います。

これは別に異性に限らず、同性でもそうで、別れることになった若い二人のように、あたしもずっと他人との関わりに深入りしないようにしていたので、友人というものを持たずにここまでの人生を歩んできてしまいました。

あの時こうしていればよかったといった後悔は全くないのですが、別な人生がどんなものになっていたのかは興味があります。ただ、あたしがあたしである以上、たぶん、結局はこういう人生になっていたのだと思うのですが。


個人的な希望を言わせてもらうと、この二人が知り合うところはさらっと描かれているのですが、そこからどういう手順でつきあい始めるようになったのか、そこのところがあたしにとって一番肝心で興味のあるところなのですが、そこがほぼ描かれていないので残念でした。


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