2010年1月19日

99通のラブレター

『99通のラブレター』読了。

京王線が舞台というので、京王線地区営業担当者としては、そして青春時代は井の頭線(←これも京王!)沿線在住者であった身としては、やはり読まずにはいられません。

ただし、このストーリー、京王線が舞台である必然性は感じられません。別に京王線でなくとも成立するし、京王線だからこそのストーリーというわけでもないです。もちろん西村京太郎ばりのトレイン・ミステリーでもありません(爆)。

突然の事故で植物状態になってしまった恋人に、彼女が毎日病院に行っては語りかける話がこの小説のメインで、語るのでは支離滅裂になるからと、一度パソコンで手紙を書いて、それを枕辺で読むということなので、タイトルのようにラブレターとなっています。

あたしのように恋人がいたことのない人間には、愛する人を失う気持ちってわからないし、ここまで誰かを愛せるのかというのもわからないのですが、ただこういう風に、愛する人が死んでしまってその思いでだけで生きるというのも、ドラマの主人公のようでいいなあと思います。「一生かけて愛したい人が死んでしまったから、もう誰も愛せない」なんて、恋人ができない理由としてはとても美しいと思うのですが......

あるいは逆に、この小説のようにさっさと死んでしまうのもいいかもしれない。

あたしとしては、このダイアリーで何回か書いたように、もし事故で死んでも会社には連絡せずにさっさと身内だけで通夜・葬儀を済ませてもらいたいので、この小説のように植物状態で寝たきりというのはちょっと困ります。それに、そういう状態の自分のところへ、いろいろな人が訪ねてくるというのもお断わり。あたしはたとえ入院してもお見舞いには誰にも来て欲しくないです。

話はそれましたが、本書、ストーリーはありふれたピュアなラブストーリーと言っていいかもしれませんし、最後にいろいろな伏線が繋がってくるところも、ありがちと言ってしまえばありがちです。また、何か所か地の文があるものの、ほとんどが手紙、つまり主人公の独白なので、周囲の人物の描写がどうしても薄くなるというか、どうしてそうなの(?)という部分で説得力がやや弱い気がします。

最近流行(?)のスタイルなら、彼女の視点から、姉(家族)の視点から、同僚の視点から、といったオムニバスで描くのかもしれませんが、本書はとにかく自己満足だろうと、利己的と言われようと、とにかく彼女の視点からのみ描き、彼女の思いを切々と綴っています。

実は、こう切ない物語は大好きで、しみじみいいなあ、と感じてしまうのです、あたしは。ちなみに、あたしは生涯一通もラブレターなんてもらったことありません。



ところで著者の吉野さんって、かつて日本テレビ系で放送された「仔犬のワルツ」も書いているんですね。なっち主演で、これもなかなか切ないドラマでしたねえ。あたし、見てました。

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