2009年12月20日

赤い糸

『赤い糸』読了。

感想はこちらに書いたので、ここでは読んでいて引っかかった点について書きます。作品の中の一篇、さえない天使がクラスメートの赤い糸をなんとか成就させようとする話です。

冒頭、天使は背中に羽が生えていて可愛らしい容姿をしているわけではなく、ごくごく普通の人間の姿をして人間社会に暮らしていると語られます。そして天使にできることは、人の手の小指に結ばれている亜運命の赤い糸を見ることができるだけなんだそうです。つまり、見えたからといって、魔法のような者を使って二人を結びつけるとか恋の炎を燃えがらせるなんて芸当は一切できないのです。

そしてこの物語の主人公である天使は、たまたま自分が所属する高校のクラスの中に、お互いが赤い糸で結ばれている男女を発見し、なんとか二人の恋を成就させようと、実に人間的な努力を試みるのです。

ここまではいいです。なんかほのぼのしていますから。なまじ全知全能の天使なんかが出てきたら却って興ざめです。

ストーリーはここから、二人の恋の行方とドジで間抜けな天使であるクラスメートの奮闘になるわけですが、あたしが気になったのは赤い糸が見えるというところです。

この天使はたまたま自分のクラスの中のある男子と女子の赤い糸が結ばれているの発見し、なんとかしようと一肌脱ぐわけですが、クラスってだいたい40人くらいいますよね。そのクラスメート全員から赤い糸が伸びているとしたら、実際には教室の中はかなり錯綜しているのではないでしょうか? この小説の二人のようにクラスの中で完結している糸もあるでしょうけど、クラスの外へ伸びていっている糸の方が多いはずです。否、むしろほとんどの糸は外へ伸びていっているはずです。

そういう赤い糸が縦横無尽に伸びているクラスの中で、ましてや糸はすべて赤一色なのに、よくもまあある男子とある女子の糸が結ばれていると発見したなあ、ということです。

こんがらがった糸をほどこうとして、途中で訳がわからなくなってやめちゃったという経験は誰しもあるかと思うのですが、赤い糸が見えている天使にとって、教室の中や一般社会って、そこら中に赤い糸が伸びているように見えるのでしょう。

それこそ、巨大な蜘蛛の巣の中に迷い込んだような感じではないでしょうか? あたしだったら丹念に赤い糸の一本一本をたどっていこうという気が失せてしまいそうです。

それと、どんな人にも赤い糸って小指に結ばれているのでしょうか? そしてその赤い糸の先は必ず誰かの小指と結ばれているのでしょうか? あたしは自分の人生を振り返ると、あたしの小指には赤い糸なんか結わかれていないんじゃないかと思えます。もしかりに糸が結ばれていても、その糸をたどっていっても誰にも行き着かない、どっかの木の枝か何かに結ばれているのではないかと思います。


読んだ感想を書く