2009年10月17日

穂村弘「世界音痴」注(二)

だが、私には最初に座った席を動くことが、どうしてもできない。(P.30)
はいはい、あた しも全くその通りです。あたしも動けません。ずっと同じ席にいます。なので、いつの間にか何故か周りに人が集まっていて、賑やかな話の輪の中心に位置していることもあれば、周囲には誰も いなくなって一人ぽつねんと酒をちびちび飲みながらお皿に残った料理をつまんでいることもあります。どちらかと言えば、後者の状況が多いですが。
自分が過去につきあった女性の名前を、インターネットで順番に検索してみた。(P.42) 不思議なことに、それでも助手席の女の子には、誰ひとりとして、一度も文句を云われた記憶がない。(P.53)
はいはい、またしても女の影です。「過去につきあった」だと、「助手席の女の子」だと、なにを贅沢なことをぬかしているんですか、この人は! あたしにはつきあった女性もいなければ、家族以外助手席に乗せた女性もいませんよ。
私は、私は、ジャムとマーガリンを混ぜることを思いついたのだ。(P.57)
あたしはトーストにマーガリンは塗っても、ジャムは塗りません。ジャムが嫌いとか食べられないとかいう理由ではないんですが......。でも、ピーナッツクリームとかチョコレートクリームを塗って食べることは子供のころよくやってました。

それはそうと、穂村さんは語呂の関係なのか、「ジャム、マーガリン」という順番で書かれています。あたしはピーナッツクリームにしろジャムにしろ、もしマーガリン(あるいはバター)と一緒に塗るのであれば、まずトーストの一面にマーガリン(あるいはバター)を塗ってから、その上にピーナッツクリームやジャムを塗ります。だから、感覚としては「マーガリン、ジャム」でないと落ち着きません。

世の中には、ジャムを一面に塗った後、その上からマーガリン(あるいはバター)を塗って食べる人もいるのでしょう、きっと。あるいはトーストの表面を目算で二分し、半分にマーガリン(あるいはバター)を塗り、もう半分にジャムを塗って食べるという人もいるのでしょう、たぶん。

そういういろいろな個人の嗜好を無視して、はなからジャムとマーガリンを混ぜてしまってよいのでしょうか、という疑問がわきます。ただ、ただ、マーガリンを塗ったトーストに、ジャムなどを塗るとき、ヘラにマーガリンがついてしまうと、そのヘラを再びジャムの瓶の中に入れるのは憚られます。なので、マーガリンを塗った後にジャムを塗る場合、ジャムは一回目のヘラの投入でトースト一面分の量のジャムをヘラに採らなければなりません。これは結構気の使う作業で、 ジャムとマーガリンが(←やはり、この順番で書くのには抵抗があります)あらかじめ一緒になったものは便利かもしれない。

そういえば、マクドナルドでホットケーキ(パンケーキ?)を頼むと、バターとメイプルシロップが半分ずつ入ったプラスチックの箱形チューブみたいなものが渡され、両方の袋部分を押しつぶすようにすると、バターとメイプルが同時にホットケーキの上にかけられる、という優れものなのかどうかわからないものがついてきます。これだって、まずはバターを塗ってから、そしてバターがホットケーキに十分しみこんでから、おもむろに慈しむようなまなざしでメイプルをかけるのがホットケーキの醍醐味だと思うのですが......。

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