2009年3月15日

感情移入不可だった

このところ読んだ文芸書二作品なんですが、どちらにも感情移入できませんでした。二作品というのは『W/F ダブル・ファンタジー』と『雪白の月』です。

どちらも、大人の恋愛小説と呼べば呼ばなくもない、というかまさしくそういう作品なんですが、あたしに言わせると「不倫話」であって、それ以上でもそれ以下でもありません。

あたし、自分が潔癖症なのかと言われると、そんな「潔癖」という言葉からイメージされる緊張感とは距離があるように思いますが、ただ、不倫ってダメです。

もちろん自分自身したこともありませんし、しそうになったこともありません。まともに恋人もできない人間に不倫などできるわけもありませんが、学生の頃から、明らかに恋人がいる人を好きにはなれませんでした。(←そんなに理性が強いわけでもないんですけど。)相手がいるとわかっただけで冷めてしまうんです。



ところで肝心の二作品の内容ですが、『ダブル...』の方は、こう言ってしまうと身も蓋もありませんが、やりたがりのオンナが何人かのオトコを渡り歩く、そんな内容です。

いくらなんでもこのまとめ方は暴力的かもしれませんが、あたしに言わせればこれに尽きます。主人公の考え方、行動に共感が持てませんし、時々そういう感情の揺れは理解できるな、と思うところはあるものの、全体としては自分に都合のいいセリフや行動を繰り返しているようにしか感じられないんです。

この作品がおじさま向けの週刊誌に連載されていたわけですが、これを読んで世のオッサン連中は「ああ、俺もこんなオンナトやりてえ」とか思っていたのでしょうか? あたしには全く理解できない世界です。

『雪白...』の方は、『ダブル...』に比べるともう少しソフトです。というか主人公がもうちょっとだけ淡泊です。女性心理の描き方としては、こちらのほうが丁寧というか自然に感じられます。

それでも、やはり主人公の言動には理解できないところが散見します。まあ、小説ですから、ここでこういうセリフを言って、こういう風に展開していかないと話が終わっちゃう、というのはあるでしょうけど、あたしだったら、そんなセリフは絶対に吐かないというシーンがしばしばありました。

そもそも、あそこまで身を焦がすような、家庭をも打ち捨てられるような恋、愛情って存在するのでしょうか? いや、どっかにはきっとあるのでしょうけど、あたしには全く理解できないですし、あたしの体の中、心の中には存在しないものだと思います。

やっぱり、あたしって愛情が薄いのでしょうか? そもそも他人を好きになる感情を持ち合わせていないのではないか、とさえ思えてきますが.....


つまるところ、あたしの場合は、まず恋をして、恋人を作り、そうしたら、他の人には脇目もふらず、その人だけを愛しましょうっていう、至極単純で最も基本的なことに落ち着きます。



ところで、『雪白の月』の作者は、前著『ブックストア・ウォーズ』の執筆に当たって、立川のオリオン書房に取材したと聞きました。今回の作品の中でも営業マンが「立川のO書房に寄ってから行くので遅れます」というセリフが挟み込まれていて、ついつい笑ってしまいました。そういえば、帯にも、その件のO書房の方のコメントが載っていますね。

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