2008年11月12日

僕僕先生

『薄妃の恋』が刊行になったので、それを読む前に前作であるこちらを読んでおこうと思って手に取りました。

読み終わって感想は、と聞かれると、なんと答えればよいのでしょう? ふわふわとしてつかみ所のない話、ちょっと『後宮小説』に雰囲気が通じるかな、という感じもします。

主人公の王弁が僕僕先生に感じる杏の香りよろしく、ふわーっとした読後感が漂うのですが、さてどんな話だったかというとうまく説明できません。



二十歳を過ぎたのに科挙を受験するでもなく、親のお陰で暮らしには困らず、のほほんと過ごしている青年が王弁が、地元に流れてきた仙人・僕僕先生と懇意に なり、弟子になります。でも弟子になったからといって仙人の修行をするわけでもなく、早々に仙人にはなれないと僕僕先生に宣告されてしまいます。

それでも居心地がよくなって一緒にいて、首都・長安それから北の方、異界へと旅をし、故郷に戻って来てからは仙丹を使った病人治療をする、そういう大事件には乏しいストーリーです。

つまり、小説らしい、と言いますか、いわゆる小説を読むときにこちらが期待するような事件とか主人公の苦難とか、そういうものはほとんど全く描かれていません。仙人界のドラマとか、実際の人間世界(官界)の醜い争いとか、市井の人々の葛藤だとか、ちらっと触れられるのにそれがメインストリームにはならないのです。

主人公も多少の成長は見えるものの、いわゆる主人公としては物足りないほどの成長でしかありません。魅力的と思われるキャラが登場するのに、みな中途半端な登場の仕方で終わってしまっていて......


こう書くとどうしようもない駄作なのかと思われそうですが、そんなことはないのが不思議な魅力です。確かに中国史とかの知識がないとわかりづらい部分はあるかもしれません。それでも肩肘張らずに読めるストーリーですし、実はより大きな大長編作品のほんの序章に過ぎないという予感もしますが如何でしょう?

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