逢瀬で読む源氏物語
アスキー新書です。
アスキーと聞くと、コンピュータ関連のホントか出してるイメージが先行して、新書でもそういった系統のものが多いんだろうなあ、と思っていたんですが、先日も中国モノ『老いはじめた中国』なんてのも出していて、決してそうではないようです。
本書『逢瀬で読む源氏物語』も、あれー、アスキー新書なんだ、という感じです。
「逢瀬で」なんてタイトルから、きわどいシーンやエロチックなものを想像していると肩すかしを食いますね。確かに逢瀬ですから夜の男女の営みのことなんですが、著者によると『源氏物語』ではそのシーンを描くことはないそうです。
『源氏物語』って、原文を読んだことないですからね、そうだったのかあ、と目から鱗です。もちろん高校時代に「桐壺」とか「若紫」などのほんの初めの部分を読んだことはありますが、あんな当たり障りのないところでは、『源氏物語』の本当のおもしろさは味わえないでしょう。
で、『源氏物語』では男女を顔を合わせた、男が女の顔を見た、という表現で男女のちぎりを表しているそうです。そして描かれるのは翌朝の情景、すなわち「きぬぎぬの別れ」ってやつですね。
そして、後半の主人公・薫が、文学史上でも稀有な人物造形をされていて、それがその後の日本文学の主流になっていったという指摘なども面白かったです。やはり『源氏物語』といえば光源氏でしょうが、薫と匂の宮、浮舟の絡む第三部も面白いんだろうなあと思わせてくれます。
本書は、そういう意味で、あたし的には最後の第三章が一番面白く読めました。
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