2006年10月 2日

中国 大国の虚実

中国 大国の虚実』読了。

先に読んだ『「反日」とは何か―中国人活動家は語る』が、いわゆる「反日」活動家へのインタビューを中心にまとめているの対し、本書は日本経済新聞の紙上連載特集記事ということもあり、中国全般にわたる内容でした。そのため、一つ一つの事柄に対する掘り下げが足りないように感じてしまうのはやむを得ないでしょう。

論調は、取り立てて反中でも嫌中でも、はたまた親中、媚中でもなく、むしろ経済活動やマクロな数字をもとに淡々と叙述が進んでいく感じです。もう少し個々人の肉声に触れてみたいと思ってしまうのは最初にも書いたように『反日とは...』を先に読んだからだと思います。

それでも、日経だから仕方ないのかもしれませんが、中国の政治動向にももう少し目配りがあってもいいんじゃないかな、という気がします。

ただ、ほとんど先進国と変わらない沿海地区のイマドキの起業家ばかりを追ったのではなく、さまざまな階層の人々を過不足なく取り上げているな、とい う感じはします。この先、いやおうなく世界経済に取り込まれて行くであろう中国の現在をレポートしたものですから、アメリカを中心とした欧米の見方にも触 れているのは当然ですが、そのあたりをもう少しふくらませてもよかったのではないでしょうかね。

2006年4月28日

李白の月

李白の月』読了。


マンガとエッセイ(解説?)を組み合わせた肩の凝らない読み物です。

南伸坊さんが選んだ(気に入った)中国古典を、マンガに仕立て直したものですが、多少は南さんなりの解釈が入っています。でも、原文の持つ、ほのぼのした味わいは失われていません。

2006年4月27日

孫文

孫文〈上〉武装蜂起』『孫文〈下〉辛亥への道』読了。

かつて単行本で刊行されていたものの改題・文庫化。基本的には孫文の一代記ではなく、中華民国誕生の直前までを描いたもので、さてこの先の展開は(?)といった期待を抱かせる結末です。

宮崎滔天をはじめ日本人との交流にもさりげなく言及しているところは、陳舜臣氏ならではだと思いますし、台湾でも大陸でも国父と慕われる孫文の、英雄ではなく、いろいろと苦労を重ねた一個人としての姿が描かれています。

しかし陳氏は歴史上それほど有名ではない人物、たとえば法規を試みて失敗し処刑されてしまった人など、にも細かく言及してくれていて、中国史好きには面白いと思いますが、中国史になじみのない人には消化しきれなくなるのではないかと、思ってしまいました。

この調子で民国成立以降へと小説が進んだら、それこそ綺羅星のごとき登場人物に囲まれた、一代スペクタクルになるのでしょうか。早くそれが読みたいものです。

2006年3月20日

謝罪を越えて

謝罪を越えて―新しい中日関係に向けて』読了。

<新思考>で話題を呼んだ馬立誠氏の作品です。原書(親本)は数年前に出たもので、その文庫化ですから、多少内容的に古びている部分もあります。

それにしても、こういった知日派、親日派が確実に中国に存在するのに、その人たちの立場を悪くしてしまうような言動ばかりを繰り返す日本の政治家には、今更ながら呆れてしまいます。

馬氏は決して単純な親日派ではありません。むしろ中国内の愛国主義に凝り固まった人たちに向ける辛辣さと同じ程度で日本に対しても意見を述べています。これに対してきちんとそのボールを受け取って投げ返せる人材が日本にはいないのでしょうか?

<新思考>にしても、この本にしても、馬氏がこのようなボールを投げて来るには、必ず中国共産党内にそういう勢力があるからだと思うのですが、この 数年、そんなボールが投げられていることにも気づかず、ほったらかしにしていた日本なわけですから、もう中国も見限ってしまったかもしれないですね。

頁/2頁 |次頁最終頁