2006年9月26日

北京ドール

北京ドール』読了。

中国では発禁になったそうで......。こういう作品って、感想に困ってしまいますね。

確かに、中国の若者のライフスタイルもずいぶん変わったな、ということはわかります。もちろん北京や上海など一部の都会でのことですけど。

むしろ、これを現代の東京に舞台を移したとしても、十分に<不良>のレッテルを貼られるような生き方です。これで通用してしまうまでに中国も変わった(資本主義化した? 腐敗した?)ってことなんでしょう。

さて、作品としてみた場合、何か大きなドラマがあるわけではありません。かといって、淡々と時が流れて、そこにしみじみとした空気が漂うという類のストーリーでもありません。

はっきり言ってしまうと、まとまりがなくて、どっちへ持っていこうとしている小説なのか、全然掴めません。これが今時の若者(!)と開き直られたら、返す言葉もありませんが、これで小説として成立しているのかなあ、という気もします。

この手の小説、ありきたりかもしれませんが、こういった不良まがいの言動を通じて主人公が大人になっていくというのが一つのパターンであると思いますが、そういったものは何もありません。私的には、この主人公には何ら人間的魅力すら覚えません(涙)。

いや、それは私が年をくったからなのかもしれませんが、基本的に真面目であった私には、たとえこの作品を高校時代に読んだとしても、何ら共感するところはなかったのではないかと思います。

2006年9月13日

人民に奉仕する

人民に奉仕する』読了。

現在の改革開放路線を取る前の中国の、とある軍隊での話です。この本のオビなどを読めばだいたいわかってしまうので書いてしまいますが、あらすじは 上司の家の(事実上)雑用係として配属された農民上がりの兵士が、その上司が北京へ行って留守の間に夫人と不倫の関係になってしまうというストーリーで す。

ただ、そういう関係になってしまうまでの主人公の心の動きが描ききれていませんし、誘ってくる夫人の心理描写もさっぱりです。(上司とは年が離れていて、この上司が既に男性機能を喪失しているため、欲求不満であったということが、後になって明かされますが......)

それに、性愛描写も淡々としていて、過激な描写にあふれている日本人には、「この程度で発禁?」という気がしてしまいます。

そして終末。結局この関係は、夫人の妊娠と軍の解散によって終わりを告げることになるのですが、主人公が休暇という名目で自宅へ戻ってから虚脱状態になってしまっているところの描写も、なんか中途半端。

あまりにも休暇が長すぎると周囲の人に言われ(それと様子がおかしいから)、軍に戻ってみると軍の解散という急転回になっており、主人公は夫人の口利きによって既に軍を離れても暮らしていけるよう段取りされていたというあんばいです。

二人の別れのシーンも、名残を惜しんでもったいつけているようでありながら、描写が甘い感じがします。十数年たち、主人公が夫人を訪ねていき、逢わ ずに守衛に言づてだけして立ち去り、その数日後夫人も家を出たまま行方不明になってしまうという結末です。これは暗に二人で駆け落ちでもしたかのような余 韻を残していますが、それはよいとして妻を寝取られた上司、また主人公の奥さんなどがちょこっとは登場しているのですが、全くきちんと描かれていない、極 論すれば、ほとんど二人芝居のような作品です。

2006年8月22日

雲上的少女

雲上的少女』読了。

何でも中国では、バレンタインデーにこの本をプレゼントするのが大流行したとか。わかる気もします。高校生の甘酸っぱい恋愛模様(恋愛とも言えないレベル?)を描いた青春小説です。

読了しての感想は「中国も変わったなあ」です。感想というか第一印象と言うべきかもしれません。もちろん、そこそこ恵まれた環境の、北京の若者の話 であって、これがすべて中国の今どきの高校生のこと、とは断定できません。むしろ、中国の地方(田舎?農村?)の同じ歳の若者からすれば「いったいどこの 国の話なの?」と言えるくらい別世界のことでしょう。

ただ、そうは言ってもこういう世界が、現在の中国の一方にあることは事実なわけで、いずれは地方にも、時間が多少かかったとしても広がっていくのだろうと思います。

主人公は学校帰りに、時には学校をサボって、町をぶらぶら歩き、ハーゲンダッツのアイスクリームを食べ、映画館でハリウッド映画や日本映画を見、 ウォークマンで西洋の音楽を聴き、イタリアレストランで夕食を食べるという、まったくあたしたち日本人と変わらないライフスタイルです。時々出てくる地名 とかを除けば、この小説の舞台が中国であるなんて思えないほどのストーリーです。

半ばくらいまでは、主人公はバカで直情的で本当に困りものの女の子です。だからリアルであり、作品を生き生きとしたモノにしているわけですけど、後半はなんか人物造形や主人公の生活描写などに精彩がかける気がするのは気のせいでしょうか?

2006年8月 4日

女帝-わが名は則天武后

女帝-わが名は則天武后』読了。

著者は中国人ですけど、フランス在住で、この本もフランス語で書かれたみたいですね。けっこう本屋の店頭でも積まれているので、目にした方も多いと思いますが......。

さて、内容は則天武后の一代記です。物語は則天武后の一人称で進行していきますので、彼女が何を思い何を考えていたのかがわかる(?)という趣向なんですが、あくまでフィクションですからねえ。

則天武后というと、中国史上唯一の女帝であり、また自身が帝位に上った後の若い取り巻きとのスキャンダラスな醜聞が思い浮かびますが、この本ではあまり政治家・則天武后という面は強調されていません。

確かに、当時の女性としては相当利発で、夫・高宗を助けている場面は描かれますが、そこらの男性政治家よりもよっぽど有能であった辣腕政治家という描かれた方はしていません。

またもう一方のスキャンダラスな一面も特に強く打ち出されているわけではありません。つまるところ、実際の則天武后ってのはこんな感じだったんだよ、というのを見せられているような......。

天下の唐王朝を乗っ取って、当時の女性としては異例とも思える長寿を全うし、なおかつ自身が皇帝になり、その人の能力を見て有能な人材を抜擢した則天武后の波瀾万丈な人生が、あまり変化のない淡々とした人生に描かれているような感じがします。

たぶん、中国史を専門としていない多くの人には、悪女と思われていた則天武后のイメージがかなり変わる作品だと思います。

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