孫子兵法発掘物語
『孫子兵法発掘物語』読了。
学術書というよりは手軽な読み物です。孫子の兵法やその発掘にまつわる学術的な蘊蓄は、巻末の浅野氏の解説を読んでいただければよいでしょう。
さて、本文。内容は面白いです。世紀の発見であるにもかかわらず、相当にぞんざいな扱われ方をした竹簡たち。その後も中国社会独特と呼ぶべきか、共 産社会独特と呼ぶべきか、はたまた文革時代の悲劇と呼ぶべきかわかりませんが、とにかく保管なども私利と権力欲に振り回されて悲惨です。
それでも学者たちの良心によって、かろうじて最悪の状況は免れ、今に至るというわけです。もちろん、今もいろいろしがらみが残っているようですが......。
そういったドキュメントとして読めばおもしろい物語です。もちろん実話です。
ただ、訳者の方はかなり中国語が堪能な方だと思うのですが、翻訳の文章はあまり読みやすいとは言えません。
いや、これは訳者の力量のせいではないでしょう。原文がよくないのだと思います。
私も中国語で書かれたものを読む機会はありますが、本書もまさしく「いかにも中国人の文章」という表現が頻繁に登場します。なんでこういう修飾語の 使い方するかなあ、と思ってしまうところがしょっちゅう登場します。原著者の文章そのものが、読み応えのある文章になっていないんだと思います。
もちろん訳者がそれを直訳するのではなく、意訳することによって読みやすくすることは可能かもしれませんが、私が感じる限り、訳者はかなり忠実に翻訳(直訳)している感じがしました。