2006年11月28日

巷談 中国近代英傑列伝

巷談 中国近代英傑列伝』読了。


中国近代史の主人公たちを十数人取り上げた評伝集。各人物の評伝は数ページのコンパクトにまとめられているので、簡単に読み進めることができます。

ただ、あたしのような中国史の専門家や中国史好きにはよく知った人たちばかりかも知れませんが、一般の方には数名を除いてなじみのない人ばかりかも知れません。

でも、中国の近代史を語るには欠かせない人ばかりですので、これくらいは是非知っておいて欲しいと思います。

さて、本書の著者は陳舜臣さんです。例によって豊かな知識に裏打ちされた、偏りのない記述を見せてくれます。ただ、本書の場合「です・ます調」と 「た・ある調」がかなり錯綜しています。これがよいリズムで現われるのであれば問題ないのですが、本書の場合、読んでいてかなり違和感が感じられます。編 集者がもう少し手を入れてもよかったのでは、と思います。

2006年11月14日

項羽と劉邦の時代

項羽と劉邦の時代―秦漢帝国興亡史』読了。

項羽と劉邦、およびその前後の時代を、『史記』や『漢書』の記述だけを頼りとするのではなく、出土資料なども斟酌しつつ、改めて概観した一書。

『史記』と『漢書』の記述の矛盾点だけでなく、『史記』の中の矛盾など、これまで薄ぼんやりと疑問に感じていたことなどを、出土資料やそこから見え てくる当時の社会状況をもとに推論し、納得のいく(辻褄の合う)結論を導き出してくれるので、目から鱗の落ちる思いで読了しました。

ただ、一般読者向けの本であるため、出土資料などの扱いに、やや簡略すぎる感もあり、いちおうは中国史を専門とした身にはやや物足りない部分もありました。

その一方、講談社選書メチエという容れ物から察するに、専門家以外の人を読者として想定しているのでしょうけど、やはり中国史に興味を持っている人でないと若干難しい部分もあるかと思います。

しかし、全体的には、各章はコンパクトにまとまっており、図版なども十分に入っていますので、理解しやすく、読みやすい本です。