2006年10月25日

中国・アジア・日本

中国・アジア・日本―大国化する「巨龍」は脅威か』読了。

印象としては、嫌中でも媚中でもなく、極めて中立的に日中関係を眺めている論調です。

最後にまとめて、これからの日中関係をどうするか、日本はどう振る舞うべきかを述べているので、その途中では「じゃあ、日本はどうすべきなのか、我々に何ができるのか?」といった思いを抱きながら読み進めないとなりません。

正直、それが非常にもどかしくもありました。しかし、最後に、この手の本の中ではずいぶんと具体的な処方箋を示してくれているので、根気よく最後まで投げ出さずに読むべきだと思います。

取り立てて、びっくりするような新事実だとか、裏の裏の探るようなエピソードが紹介されるわけではありませんが、だからこそ、地に足の着いた議論という感じがします。

2006年10月20日

日中2000年の不理解

日中2000年の不理解―異なる文化「基層」を探る』読了。


日本人は感性の国民であり、信念を持っていて何事にもその信念を基準として行動する中国人や欧米人(キリスト教徒)、イスラム教徒とは根本的に異なる、と いう指摘はこれまで専門家なども指摘していたような気もしますが、王敏さんは非常に身近な例をあげて説明してくれるので非常にわかりやすいです。

恐らく、王敏さん自身が、まだ確固とした論拠を自分なりに構築できていない(構築途中である)ので、われわれ読者と一緒に問題提起し考えていこうという姿勢があるからだと思います。

もちろん、このような議論を極端に進めてしまうと、だから日本時は世界の中で特殊であり他国とは理解し合えないんだという偏狭な議論に行き着いてしまいますが、そのことにもきちんと筆を伸ばしています。

ただ、一点、日本人は神社や寺院に熱心にお参りしていると述べていましたが、確かに表面的には毎年元旦の初詣など、日本人がかなり信心深く思われる ような現象もありますが、あれって、あたしには一種のレジャーであって、遊園地に行く、買い物に行くといったことと同じような乗りなのではないかと思うん です。

むしろ中国の寺院や道観などの方が、よっぽど熱心に祈りを捧げている中国人を見かけるような気がするんですけど...

2006年10月 2日

中国 大国の虚実

中国 大国の虚実』読了。

先に読んだ『「反日」とは何か―中国人活動家は語る』が、いわゆる「反日」活動家へのインタビューを中心にまとめているの対し、本書は日本経済新聞の紙上連載特集記事ということもあり、中国全般にわたる内容でした。そのため、一つ一つの事柄に対する掘り下げが足りないように感じてしまうのはやむを得ないでしょう。

論調は、取り立てて反中でも嫌中でも、はたまた親中、媚中でもなく、むしろ経済活動やマクロな数字をもとに淡々と叙述が進んでいく感じです。もう少し個々人の肉声に触れてみたいと思ってしまうのは最初にも書いたように『反日とは...』を先に読んだからだと思います。

それでも、日経だから仕方ないのかもしれませんが、中国の政治動向にももう少し目配りがあってもいいんじゃないかな、という気がします。

ただ、ほとんど先進国と変わらない沿海地区のイマドキの起業家ばかりを追ったのではなく、さまざまな階層の人々を過不足なく取り上げているな、とい う感じはします。この先、いやおうなく世界経済に取り込まれて行くであろう中国の現在をレポートしたものですから、アメリカを中心とした欧米の見方にも触 れているのは当然ですが、そのあたりをもう少しふくらませてもよかったのではないでしょうかね。