溥儀
『溥儀―清朝最後の皇帝』読了。
数奇な一生を送った、中国二千年の皇帝制度の最後を飾った宣統帝・溥儀の評伝。数奇な一生、激動の生涯など溥儀の一生を形容する言葉には困りません が、比較的淡々と描かれている、むしろ大きな出来事、劇的な場面もないかのような印象を受けるほど静かな一生に感じてしまうのは気のせいでしょうか?
時代背景などの説明に多少紙幅を費やしているためか(←それはそれで、当時を知るには、そして溥儀の置かれた立場を知るには仕方ない)、溥儀という人の性格への言及があまり深く掘り下げられていないうらみが残ります。
個人的には、溥傑と浩夫妻の記述が興味深かったです。先年テレビドラマで竹野内豊と常盤貴子が演じたこの夫婦はお互いを思いやり時代に翻弄される二人でしたが、溥儀の立場から見ると浩はかなり嫌な女性だったようで、それが印象的でした。
また学生時代に溥儀の最後の妻・李淑賢の手記を元にした映画を見ましたが(「火龍」だったかな?)、これでは本当に仲のよい夫婦に描かれていたのですが、どうも実際にはそれはきれい事、あくまで映画の中の話だったようで、そんなところも楽しく読めました。
さて、結局のところ、激動の時代、そして中国の長い皇帝制度の最後を飾る末代皇帝、そして相継ぐ戦争と革命、そんな時代を生き抜いた溥儀という人物は、それだけで格好の小説のモデルでしょう。
ただ、知れば知るほど、溥儀という人の小人さが見えてきて、小説に仕立てる(こういった本を書く)ことがばかばかしくなるような感想を覚えるのはあたしの偏見なのでしょうか?
なにせこの時代、西太后、袁世凱、孫文、蒋介石、毛沢東、周恩来と歴史上の英雄があまた出てくるじゃあありませんか。そんな中で溥儀という存在はあまりにも軽いです。
もちろんこういった人物(さらには日本をも!)向こうに回して、見事天寿を全うしたと考えれば、溥儀もなかなかどうしてやるじゃないかという見方も出来るのかもしれませんね。『三国志』の蜀漢二代皇帝・劉禅のような印象です。
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