2006年8月30日

歴史の嘘を見破る

歴史の嘘を見破る―日中近現代史の争点35』読了。

いわゆる対中強硬論者のテーマ別論説集です。どちらかといえば親中派のあたしには、うなずけない論もあれば、それなりに首肯できる論もありました。 それほど感情に流れず、引用なども比較的出典を明示しているので、その引用が正しいのかどうか検証しようと思えばできるでしょう。

しかし、こういった論が、どうやったら中国人の心に届くのでしょう。はなからそんなこと考えていないように見受けられますが、それでは未来がないと思います。やはり、本書の議論について、冷静かつ客観的な中国人の反論や欧米人の第三者的意見・見解を聞いてみたいものです。

2006年8月28日

中国10億人の日本映画熱愛史

中国10億人の日本映画熱愛史--高倉健、山口百恵からキムタク、アニメまで』読了。

中国映画の本ってのは、決してないわけではなかったですが、この本は中国に於ける日本映画の受容史とでも言うべき内容であるところに特色がありま す。中国で高倉健や中野良子が人気であった(ある)のは知っていましたし、コン・リーがデビューした頃に「中国の山口百恵」と言われていたことも覚えてい ます。

そういう断片的な知識を持っている人ってのは日本にもかなり多いと思いますが、本書を読めば、何故人気があったのか、中国で受け入れられたのかがよくわかります。

ただ、筆者の関心がそうであるからなのか、高倉健が人気を得た、文革直後の日本映画需要については社会背景なども含め非常に中身の濃いものになって いますが、民国以来の中国映画史や最近のドラマの需要などについては紙幅の関係もあるのか、今ひとつ突っ込みが足りないというか、掘り下げて欲しいという うらみが残ります。

あくまで「映画」に焦点を当てていますので仕方ないと言えばそれまでですので、映画に変わル、昨今のドラマの受容史について、次の一書を期待します。

個人的な体験で言えば、私もこの十年来毎年のように中国へ行ってます。晩にホテルの部屋で現地のテレビ番組をボーッと見ていますが、かつては本当に 日本のトレンディードラマの放映が多かったです。それこそ、どこを回してもやっているという感じでした。それがこの数年はほとんど見られなくなり、韓国の ドラマが主流となりました。本屋などのDVD(ビデオCD)コーナーでも、日本のドラマより韓国ドラマの方がたくさん並んでいます。

そういう体験があるからこそ未来の姉妹篇「ドラマ熱愛史」に期待したいところです。

2006年8月24日

上海狂想曲

上海狂想曲読了。

戦前の日本人作家や新聞記者の上海体験を通して、当時の日本人にとっての上海を描いた作品。

本文中で「最も近い外国の都市」というフレーズで上海が紹介されているのですが、戦時中ということもあるのでしょうが、ほとんど外国としての一面が出てこない気がします。

もちろん、日本と中国が交戦中で、その緊張感とか悲惨さなどは感じられますが、いわゆる「魔都」上海というイメージがからはほど遠い感じです。あまりにも日本人の書いたものに依拠しすぎたからではないでしょうか?

当時の日本人にとって上海とは何か、どういうところか、何故引きつけられたのか、今ひとつ伝わりづらかったです。

あえて、日本から訪れた短期滞在者の書いたものを資料として使ったところがミソなんでしょうけど、当時上海に住んでいた多くの日本人の肉声が伝わっ てきませんし、もちろん中国人や租界のフランス人、イギリス人などの様子、息づかいも伝わってきません。それが、今ひとつ深みの欠けるものになってしまっ た原因なのではないでしょうか?(著者は、中国語を解するのか、ちょっと疑問に感じたところもありましたので......)

といった感じで、あたしはもっと現地の人の声が聴きたかったのですが、逆に考えると、実は当時住んでいた人の書いたものってのは意外とあるのかもし れません。むしろ、こういう作家や記者などの記録を手軽にまとめた本の方がなかったかもしれません。そういう意味では貴重な一緒です。ただ、やはり当時の 上海の地図は入れて欲しかったです。目次のところに当時の俯瞰図のような上海-南京周辺図が載っていますが、それでは本書に出てくる地名などの位置関係が ほとんど掴めません。それが残念な点です。

2006年8月22日

雲上的少女

雲上的少女』読了。

何でも中国では、バレンタインデーにこの本をプレゼントするのが大流行したとか。わかる気もします。高校生の甘酸っぱい恋愛模様(恋愛とも言えないレベル?)を描いた青春小説です。

読了しての感想は「中国も変わったなあ」です。感想というか第一印象と言うべきかもしれません。もちろん、そこそこ恵まれた環境の、北京の若者の話 であって、これがすべて中国の今どきの高校生のこと、とは断定できません。むしろ、中国の地方(田舎?農村?)の同じ歳の若者からすれば「いったいどこの 国の話なの?」と言えるくらい別世界のことでしょう。

ただ、そうは言ってもこういう世界が、現在の中国の一方にあることは事実なわけで、いずれは地方にも、時間が多少かかったとしても広がっていくのだろうと思います。

主人公は学校帰りに、時には学校をサボって、町をぶらぶら歩き、ハーゲンダッツのアイスクリームを食べ、映画館でハリウッド映画や日本映画を見、 ウォークマンで西洋の音楽を聴き、イタリアレストランで夕食を食べるという、まったくあたしたち日本人と変わらないライフスタイルです。時々出てくる地名 とかを除けば、この小説の舞台が中国であるなんて思えないほどのストーリーです。

半ばくらいまでは、主人公はバカで直情的で本当に困りものの女の子です。だからリアルであり、作品を生き生きとしたモノにしているわけですけど、後半はなんか人物造形や主人公の生活描写などに精彩がかける気がするのは気のせいでしょうか?

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