2006年4月27日

孫文

孫文〈上〉武装蜂起』『孫文〈下〉辛亥への道』読了。

かつて単行本で刊行されていたものの改題・文庫化。基本的には孫文の一代記ではなく、中華民国誕生の直前までを描いたもので、さてこの先の展開は(?)といった期待を抱かせる結末です。

宮崎滔天をはじめ日本人との交流にもさりげなく言及しているところは、陳舜臣氏ならではだと思いますし、台湾でも大陸でも国父と慕われる孫文の、英雄ではなく、いろいろと苦労を重ねた一個人としての姿が描かれています。

しかし陳氏は歴史上それほど有名ではない人物、たとえば法規を試みて失敗し処刑されてしまった人など、にも細かく言及してくれていて、中国史好きには面白いと思いますが、中国史になじみのない人には消化しきれなくなるのではないかと、思ってしまいました。

この調子で民国成立以降へと小説が進んだら、それこそ綺羅星のごとき登場人物に囲まれた、一代スペクタクルになるのでしょうか。早くそれが読みたいものです。

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