2006年3月28日

世界史のなかの満洲帝国

世界史のなかの満洲帝国』読了。

ふつうの日本人が気軽に読める満洲国、満洲帝国史の本を書きたいという著者の目的はある程度は果たされたと思いますが、やはり東洋史、中国史、アジア史や日本史、それも近代史を学んだことのない人には歯ごたえのある本だと思います。

世界史の中に位置づけようという意識のために、中国史をずいぶん古代にまで遡り、日本や朝鮮、それにモンゴル/ロシアの歴史にまで筆を進めて満洲を とらえようとする試みは、非常に面白いものでしたが、そのぶん肝心の満州国・満洲帝国についての記述が薄まってしまったような気がします。

もちろん満洲帝国の歴史はまだまだ歴史学の分野で確定できていない部分も多く、そういうところは意図的に避けて論を進めているのでやむを得ないのかもしれませんが、もう少し満洲帝国の部分を多くした方がよりストレートに入ってきたのではないかと思います。

またこの時代を扱う場合、どうしてもくだらないイデオロギー論争や自虐史観などに振り回されてしまう嫌いがありますが(同じ一つの史実に対して全く 異なる評価を下されることがある!)、それを避けるのではなく、両論併記のような形を取ってみても面白かったのではないかと思いました。

2006年3月20日

謝罪を越えて

謝罪を越えて―新しい中日関係に向けて』読了。

<新思考>で話題を呼んだ馬立誠氏の作品です。原書(親本)は数年前に出たもので、その文庫化ですから、多少内容的に古びている部分もあります。

それにしても、こういった知日派、親日派が確実に中国に存在するのに、その人たちの立場を悪くしてしまうような言動ばかりを繰り返す日本の政治家には、今更ながら呆れてしまいます。

馬氏は決して単純な親日派ではありません。むしろ中国内の愛国主義に凝り固まった人たちに向ける辛辣さと同じ程度で日本に対しても意見を述べています。これに対してきちんとそのボールを受け取って投げ返せる人材が日本にはいないのでしょうか?

<新思考>にしても、この本にしても、馬氏がこのようなボールを投げて来るには、必ず中国共産党内にそういう勢力があるからだと思うのですが、この 数年、そんなボールが投げられていることにも気づかず、ほったらかしにしていた日本なわけですから、もう中国も見限ってしまったかもしれないですね。