2006年2月23日

漢文の素養

漢文の素養 誰が日本文化をつくったのか?』読了。

漢文は漢字によって表現されるわけですので、少し前に読んだ『日本の漢字』と通じるところもあり、なかなか面白く読めました。記述の多くは、漢文読 解力の歴史と括ってしまうと間違っているかもしれませんが、日本の歴史と漢文との関わりについてで、簡単な日本漢文学史といった感じもします。

記述中には結構たくさんの引用が挟み込まれていて、実際の漢文に触れながら読み進めることができますが、漢文にあまり慣れていない人には、その部分 がちょっとしんどいかもしれません。でも、引用には必ず訳が添えてありますので、原文を飛ばして訳だけ読むことも可能です。(って、漢文だって日本語の一 種なので<訳>ってのもおかしな話なんですけど......) でも、たぶん著者は、この本を手に取った人には、このくらいの漢文は読んで欲しいという思いもある だと思います。ここは、ぜひとも漢文素読を味わってもらいたいものです。


個人的には、漢文の歴史をもう少し端折って、近代以降、現在までの漢文の衰退と現状、それに対する著者の意見部分をもっと読んでみたかったと思います。

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2006年2月18日

日本の漢字

日本の漢字』読了。

タイトルこそ<日本の...>ですが、漢字全般について書かれていますので、漢字マニアには興味深く読めるでしょう。

漢字の日本独自の発達・諸相といったものを幅広く紹介していますが、焦点が何なのか、ちょっとぼやけ気味という漢字もします。取り立てて大きな問題提起というのが全般を通じてないからなのかもしれません(あたしが見つけられなかっただけ?)。

否、幅広く、様々な話題を、わかりやすく丁寧に書いているので、そういう印象を受けるのかもしれません。

漢字は古来多くの人が研究をしてきましたし、現在もそれは続いています。コンピュータや携帯電話など文字をめぐる環境もめまぐるしく変わっています ので、漢字に関する書籍は過激なもの、キワモノも含め数多く出版されています。そんな中にあって本書は、非常に静かな本です。それだけに、うんうんと頷か されることも多く、素直に読める本です。

2006年2月10日

チンギス・カン

チンギス・カン―"蒼き狼"の実像』読了。

ユーラシア大陸全域にまたがる巨大帝国を築いたジンギス・カンとなると、一般の中国史からはちょっと外れるような気もしますが、元王朝は中国の正当王朝の一つですし......。

考古学と文献斯学をミックスして、その成果をわかりやすく解説してくれている一書です。決して英雄礼賛になることもなく、かといって、一般にはつま らなくなりがちな考古学的記述に陥ることなく読めました。なにしろ、今のところ、あれだけの世界帝国を作り上げたにもかかわらず、古代エジプトのような金 銀財宝のような考古学的成果が何も出てこないわけですから。

比較的地味な内容を飽きさせずに読ませてくれるわけですから、著者はなかなかの文章力だと思います。写真や図版なども適宜挿入され、理解を助けてくれます。

実は意外とごくごく平凡な一遊牧民、それが読後に感じたジンギス・カン、否、チンギス・カンの印象です。

2006年2月 3日

中国が「反日」を捨てる日

中国が「反日」を捨てる日読了。

日中関係のこのところの軋轢を、主として中国共産党首脳部の権力闘争などとの関わりで述べた本です。いわゆる愛国教育のせいだ、小泉の靖国参拝がと いった表面的な現象の裏にある、共産党幹部の政争や中国の社会事情にまで言及しており、「そうか。そういう見方があるのか」と目からウロコもしばしばでし た。

それにしても、中国側は日本に対していろいろなチャンネルを使って対日関係改善のメッセージを送っているのに、それを感知できない日本の政治家っ て、どうなっているんでしょう? 外務省もしかり。彼らの情報収集のアンテナはすべてアメリカの方だけを向いているような気がします。

救いがたい日本の政治家・役人もそうですが、それでは著者のようなチャイナ・ウォッチャーが機会を捉えて政治家に物申しているのか、提言・アドバイ スをしているのか、という疑問というかもどかしさも感じます。もちろん「行っても聞き入れない」ような頭の固い連中が、永田町には多いのでしょうけど。