日中一〇〇年史
現在の日中関係に関して、楽観論から悲観論まで、それこそ数え上げたらきりがないほど出版されていますが、そういった書籍に対し本書は淡々とした語り口調で、日中近代史と知識人の群像を描いています。
<日中>とは言っても、いわゆる中国モノと言うよりも、日本近現代思想史といった感じが強く、竹内好、尾崎秀樹といった面々は、古代や漢文偏重の大学(中国文学科)などでは意外と扱われていなかったりしますので、やや難しくもあり新鮮でもあると思います。
この時代の中国史に興味のある人には、いろいろ示唆に富む言説も見受けられます。ただ、「です・ます調」という文体のせいもあるのでしょうが、扱わ れている話題がいろいろ横道にそれ、今ひとつすっきりとした論理構成になっていない感がします。あれも言いたい、これも書いておかなくちゃという感じで、 著者みずからが整理し切れていない印象を受けるのは、むしろあたしの勉強不足のせいなのでしょうか?
しかし、上にも述べましたが、著者が発する疑問の数々は、中国学を志す者にとって、著者の解答を待つのではなく、自分自身で考え解答を用意すべき問題だと、改めて感じさせられました。