2006年1月30日

日中一〇〇年史

日中一00年史 二つの近代を問い直す読了。

現在の日中関係に関して、楽観論から悲観論まで、それこそ数え上げたらきりがないほど出版されていますが、そういった書籍に対し本書は淡々とした語り口調で、日中近代史と知識人の群像を描いています。

<日中>とは言っても、いわゆる中国モノと言うよりも、日本近現代思想史といった感じが強く、竹内好、尾崎秀樹といった面々は、古代や漢文偏重の大学(中国文学科)などでは意外と扱われていなかったりしますので、やや難しくもあり新鮮でもあると思います。

この時代の中国史に興味のある人には、いろいろ示唆に富む言説も見受けられます。ただ、「です・ます調」という文体のせいもあるのでしょうが、扱わ れている話題がいろいろ横道にそれ、今ひとつすっきりとした論理構成になっていない感がします。あれも言いたい、これも書いておかなくちゃという感じで、 著者みずからが整理し切れていない印象を受けるのは、むしろあたしの勉強不足のせいなのでしょうか?

しかし、上にも述べましたが、著者が発する疑問の数々は、中国学を志す者にとって、著者の解答を待つのではなく、自分自身で考え解答を用意すべき問題だと、改めて感じさせられました。

2006年1月19日

出身地でわかる中国人

出身地でわかる中国人』読了。

この本、別に客観的なデータで各省ごとの特色・特質を述べた本ではありません。著者が何度も訪中した経験のみを頼りに中国各地のことを書いたもので、言葉を悪く言ってしまえば「単なる旅行の感想」です。

なので、タイトルは偽りあり、だと思います。それに著者本人なのか、あるいは編集担当者なのかわかりませんが、ルビの誤植がとても多いです。中国学 の専門家ならあり得ないような間違いがありますので、これは担当編集者の仕業だろうと思いたいです(著者が自分で付けたルビなら、この本の著者は全く信用 ならないと断ぜざるを得ません)。

さて、内容ですが、旅の友としては肩もこらずに読めます。あたし自身が行ったことのない土地の紹介も多いので、そういう部分は上に述べたように批判的な目を維持しつつも楽しく読めました。比較的写真が多く挿入されているので、そういうのを眺めるのは楽しいです。

2006年1月12日

「小皇帝」世代の中国

「小皇帝」世代の中国』読了。

既に一人っ子政策の第一世代は社会人となり、購買力や学歴など様々な面で、社会への影響力を増しつつあります。そんな一人っ子世代の有り様を描き出した一冊です。

中国の場合、日本や西欧諸国がそれなりの年月をかけて歩んだ道のりを、わずか十余年、場合によっては数年で駆け抜けてきたわけで、その「駆け足」は今も続いている状態、否、ますます加速度を増しているように思えます。

急激な社会変革が巻き起こす様々なひずみ・ゆがみに加え、一人っ子という問題(甘やかし、対人関係などなど)、社会主義から事実上の資本主義への転 換。そういったものが一気に出現し、なおかつ広大な国土と人口を持つ国だけに、ひずみや格差が日本などの数倍にもなって現われているのが今の中国なので しょう。

ですから、本書は別に中国のお話として読まなくとも、<主語>さえ見なければ、現代日本若者事情としても読めてしまいます。そんな中国のこれからを になっていく若者と日本人はどうつきあっていけばよいのか? 著者の解答は交流を広め深めていくしかないってことのようですが、これだけ中国の若者の中へ 飛び込んでいった著者だけに、研究者やジャーナリスト、ビジネスマンには思いもつかない処方箋を示して欲しかったと思うのは、虫のいい話でしょうか?

2006年1月 6日

人民元は世界を変える

『人民元は世界を変える』読了。

中国モノと言うよりは、経済モノと言った方がいいような本でした。経済・金融などに疎いあたしには少々骨が折れました。

ただ、中国モノというと「とんでも本」が多い中、むしろ本書のように必ずしも中国問題専門家でない人の著作の方が客観的かつ冷静に視点を提供してくれる感じがします。

それに、自分は客観的に見ているつもりでも、やはりあたしだってそれなりの偏見を持って中国を見てしまっているわけで、そういう自分に気づかせてく れる意味でも、この手の著作って、たまには読むべきかと思います。(中国のこと何も知らない人が、印象だけで勝手に議論を進めてしまうような本も多数あり ますが......汗)