2005年12月23日

東アジア「反日」トライアングル

東アジア「反日」トライアングル読了。

この前に読んだ「俺様国家...」に比べると、著者が大学の教員だけに、話の進め方に乱暴さは少ないです。著者の専門は北朝鮮や韓国と言うことで、中国 に関しては著者独自の論と言うよりも、他人の著作やマスコミ報道などからの情報で構成した感があり、朝鮮問題ではなかなか面白い話が書かれているので ちょっと残念です。

ただ、全体としては好きであるからこそ、その反動で嫌いになってしまったとでも言うのでしょうか、中国・韓国・北朝鮮を見下している風が感じられました。

それでも、韓国・台湾を近代の真っ只中、中国を近代に入りつつある頃、北朝鮮を中世と見るのは興味深い視点です。たぶん明治から昭和初期にかけての日本って、当時の欧米の先進国から見たら、今の中国・韓国のような感じだったのかなあ、と思いました。

さて、著者は長い間韓国に滞在し、それなりに韓国という国を見たと思います。だからこそ見える、見えてしまう負の面というのはわかります。でも、それを本にまとめて日本人に知らせるというのも理解できます。

でも本当なら、そこから一歩進めて、それを乗り越えて隣国として分かり合えるためにはいかにすべきかを述べて欲しいと思いました。本書中で全く触れ られていないわけではないのですが、本書全体のトーンとしては、中国・韓国・北朝鮮は今のところどうしようもない国、という印象を抱かされてしまいます。

2005年12月19日

"俺様国家"中国の大経済

"俺様国家"中国の大経済読了。

あまり後味のよい本ではありませんでした。いわゆる中国脅威論の一角を占める書籍なのでしょうが、どうしてこうも中国を敵視するのだろうかと思います。

確かに書かれている内容でうなずける部分も多々あります。ただ、そこから先が賛成できないことが多いです。

それと読んでいて気になったのは、著者がほとんど論拠となるものを示さない点です。こういった新書だからなのかもしれませんが、中国や日本、あるい は欧米の新聞・雑誌・書籍などに書かれていることを論教にしているのであれば、それを挙げて欲しいものですが、ほとんどすべて論拠なしなので、言葉を我好 く言えば「著者の勝手な思い込み」という感じがしてしまいます。

でも、昨今の日中関係をみてみると、日本ではこういった論調の本が受けるのだろうな、とも思います。まず対決ありき、という姿勢は非常に危険だと思うのですけど......。

2005年12月12日

中国経済のジレンマ

中国経済のジレンマ』読了。

この手の本は、もう何冊も読んでますが、この本は経済学や実際の貿易・経済の現場を心得ていないと、ちょっと難しいかなと感じます。あたしのように、経済学の数字がからきしな人間には、読み進めるのがかなり大変でした。

ただし、著者がトータルで主張していることはよくわかりますし、さすがに中国人だなと思わせる視点で興味深いところもあります。その一方で、日本在住だけに中国国内に暮らしていては気づかない部分にも目が行き届いていて、そういう意味でバランスの取れた記述だと思います。

格差が開きすぎてしまった中国は、日本やアメリカはその台頭をかなり驚異に感じているようですが、砂上の楼閣に近い経済発展、沿海地区の反映という気がします。

「そんなことはない、驚異だ」と主張する人も多いのでしょうが、少なくとも中国の指導部はかなりの危機意識をもって現在の安定を如何に維持するか、腐心しているのではないでしょうか。こういった論著を読むたびに、そう思います。

2005年12月 2日

中国農民の反乱

『中国農民の反乱―隠された反日の温床』

読了。


沿海部の大都市の繁栄ぶりとは裏腹に、中国の農村は今後の中国の発展の最大のアキレス腱になるという話は、既に聞き及んでいましたが、著者自らの体験によるそのリポートです。

原書が出て、数年後の今年、文庫化されたわけですが、著者曰く、問題は少しも解決していないと。本当に深刻な問題です。

昨今の日本では中国人の増加が治安の悪化を招いているという言説が聞かれますが、中国でも農村からの流入者が増えることで北京や上海では治安が悪化しているとのこと。田舎者を馬鹿にし差別する北京や上海の人は、中国人を差別する日本人と、どことなく重なって見えました。