2005年10月31日

ほんとうは日本に憧れる中国人

『ほんとうは日本に憧れる中国人- 「反日感情」の深層分析』読了。


中国の若者は意外と日本に憧れている、という内容。中国国内の反日・嫌日の人が読んだら怒るかもしれませんが、確実にこういう若者は増えているのだと思います。ただ、中国の若者がみんなそうなんだと短絡的に考えるのもいけないでしょうし......。

本書は、この春の中国反日デモの前に書かれた(出版された)ものなので、この本で中国の若者に対する好意的印象を持った人には、現実とのギャップを感じるかもしれませんが、本書をよく読めば、決して一筋縄ではいかない中国の若者の感情というものにも触れられています。

ところで、この手の本の論調として、そしてそれはもちろん正論だと思うのですが、日本人は偏った報道や表面的な現象にばかり目を向けず、もっと中国 のこと、中国人のことを知る必要がある、という言説を耳にします。もちろん知りたいと思う日本人が多いから、日本人・中国人のさまざまな立場の人が書い た、こういった本が数多く出版されていると思うのです。

でもって、こういう本を読んだ時に思うのは、中国では「日本と日本人をもっと知ろう」という本は出ているのだろうか、そして日本のこの手の文庫・新 書がそれなりに全国津々浦々の本屋にまで行き渡り、多くの日本人の目にとまる現状に対し、中国はどうなのだろうか、ということです。

たぶん中国でもこの手の本は出ているのかもしれませんが、どれだけ中国人に読まれているのでしょう。それと、日本ですと、かなり中国べったりな論調 の本から嫌中・反中の過激な本まで幅広く出ていますが、中国ではどうなのでしょう? 別に中国は言論の自由のない国だ、政府批判的な本なんか出版できない とは思いません。純粋に、そういった書籍はどのくらい出ていて、国民に浸透しているのかが知りたくなるのです。

2005年10月27日

満鉄調査部

『満鉄調査部―「元祖シンクタンク」の誕生と崩壊』読了。

満鉄調査部の歴史というよりは、必然的に満洲国史、日本近現代史といった内容になってしまいます。「あとがき」で「人物を中心に論を進めたために、 日本の国内政治や満鉄と調査部の関係が後景に退いた感がなきにしもあらず」と書いていますが、確かに満鉄調査部以外の話題に筆が及んでいる部分が少なくあ りません。それが満鉄の面白さでもあるのでしょうが。

それにしても、最近は満洲国関係の書籍が、意外と書店店頭を賑わしているような感じがします。やはり戦後60年という節目だからなのでしょうか。で も、ほとんどの書が「満洲」を「満州」と表記しているのは、やはり「いかがなものか?」と思ってしまいます。(高島俊男さんの著書をお読みください!)

なお、本文中157ページの表、一番左に載っている「鈴江源一」は「鈴江言一」の、205ページ後ろから3行目「少なくしようと、し憲兵隊に」は「少なくしようとし、憲兵隊に」の誤植ではないかと思われます。

2005年10月24日

反日と反中

『反日と反中』読了。

直前に読んだ『...永遠のミゾ』に比べると、資料も豊富で、研究者の説を多く紹介してあり、かなり濃い本です。極めて対照的と言えます。

著者の立場は私から見ると非常に公平だと思いますが、やはりいろいろなところからクレームが来るのでしょう。しかし、それは仕方ないことだと思います。できうれば、著者が書いていることについて、予想される反論についてももう一言添えて欲しかったと思います。

著者の言は、別の書籍でも耳にする言説ですが、巷にはそれらに対する反論・反対意見も多数存在します。そういったものについて、もう少し紙幅を割いてもらえれば、より説得力がある本になったのではないかと思います。

本書に登場する中国人研究者は、かなり本音を語ってくれていますが、それでもまだ中国政府、あるいは共産党に遠慮した公式発言的なものが目につきま す。彼らにとって忘れられないのは、実は日本の侵略という歴史ではなく、文化大革命で徹底的に弾圧された歴史の方ではないかと、読みながら思いました。

2005年10月20日

日本人と中国人永遠のミゾ

『日本人と中国人永遠のミゾ―ケンカしないですむ方法』読了。

サブタイトルに「ケンカしないですむ方法」とありますが、決して解決方法を具体的に提示しているような本ではありません。日本語・日本文化を専攻し、日本にも長く生活している著者が、身近に感じた日本と中国とのギャップを語るという、よくあるパターンの本です。

ただ、著者が何度も述べているように、お互いの違いを認め合い、そしてきっと解りあえると信じることが大切なんだということを感じる読後感です。つ まり「ミゾ」を埋めるのではなく、橋を何本も架けることを目指すべきだと思いました。たぶん、著者もそんなことが言いたかった・書きたかったのではないか と思います。
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